読み方:ねこのてもかりたい

「猫の手も借りたい」の意味

非常に忙しくて人手が足りず、どんな手助けでもほしいほどの状態を表す慣用句です。

単に予定が多いだけでなく、仕事や作業をこなすための人手が不足している様子をたとえています。

「猫の手も借りたい」の語源・由来

人間の仕事を手伝うことができない猫の「手」まで借りたい、という誇張から生まれた表現です。

猫は人間の仕事にはあまり役立たない動物と見られており、その猫にまで助けを求めたいほど忙しいという発想があります。

「手」には、人の働きや助力を指す使い方があります。

「猫の手」とすることで、普通なら働き手として考えないものまで必要とするほどの人手不足を印象的に表しています。

「猫の手も借りたい」の使い方

次のような型がよく使われます。

  • 「猫の手も借りたいほど〜」
    後ろに「忙しい」「人手が足りない」などを続け、忙しさの程度を示します。「猫の手も借りたいほど忙しい」「猫の手も借りたいほど人手が足りない」などの形です。
  • 「猫の手も借りたい+名詞」
    後ろの名詞を修飾する形でも使えます。「猫の手も借りたい忙しさ」「猫の手も借りたい状況」などと使います。
  • 「猫の手も借りたい」
    文末に置いて、その時の切迫した忙しさを表すこともできます。「年末は猫の手も借りたい」「今は本当に猫の手も借りたい」などの形です。

「猫の手も借りたい」の例文

  • 注文が一度に押し寄せ、厨房は猫の手も借りたいほど忙しくなった。
  • 文化祭の前日は準備することが山ほど残っていて、みんな猫の手も借りたい状況だった。
  • 父は収穫期になると、「今だけは猫の手も借りたいよ」と言いながら朝早くから畑に出ていた。

「猫の手も借りたい」の類似表現

てんてこ舞い(てんてこまい)

非常に忙しく、慌ただしく動き回る様子を表します。

「てんてこ舞い」は忙しさの中で慌てて動く様子を表しやすく、人手が足りないことを必ずしも含みません。

手が足りない(てがたりない)

必要な人数や働き手が不足していることを直接表す言い方です。

「猫の手も借りたい」のような誇張を含まないため、仕事上の状況説明などにもそのまま使えます。

「猫の手も借りたい」の古い用例

享保9年(1724年)に初演された近松門左衛門の浄瑠璃『関八州繋馬』には、「上から下までおめでた事、猫の手もかりたい忙しさ」という記述があります。

『精選版 日本国語大辞典』では、この浄瑠璃を「猫の手もかりたい」という言い回しが初めて世に出た作品として挙げています。

現在と同じ「猫の手も借りたい」という言い回しが、すでに江戸時代中期に「忙しさ」を表すたとえとして使われていました。

この近松門左衛門の『関八州繋馬』は、国立国会図書館や京都大学にも古い版本が所蔵されています。

参考文献・出典

  • 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
  • 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「猫の手も借りたい」項。
  • 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「猫の手も借りたい」項。
  • 小学館辞書編集部「第78回 猫の手も借りたい」『ことばのまど』。
ABOUT ME
北澤篤史
ことわざ学会理事。ことわざ・慣用句・故事成語・四字熟語・漢字熟語を対象に、語源・由来、古い用例、文献上の変遷を研究している。2025年度ことわざ研究奨励賞受賞。著書に『〈試験に出る〉マンガでわかる すごいことわざ図鑑』『〈試験に出る〉マンガでわかる おもしろい四字熟語図鑑』『マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑』(いずれも講談社)がある。