読み方:にそくのわらじをはく

「二足の草鞋を履く」の意味

一人で、両立しにくい二つの職業や役目を兼ねることです。

もとは相反するような仕事を兼ねる場合に使われていましたが、現在では、会社員と作家、教師とスポーツ選手など、性質の異なる二つの仕事を並行して行う場合にも広く使われます。

「二足の草鞋を履く」の語源・由来

「二足の草鞋」は、一人では二足の草鞋を同時に履けないことをもとにした表現です。

特に、江戸時代に博徒が、賭博を取り締まる捕吏の役目まで兼ねることを指したとされています。

本来は対立する立場を一人で兼ねることを表していましたが、後には異なる二つの職業や役目を兼ねる意味へ広がりました。

「二足の草鞋を履く」の使い方

次のような型がよく使われます。

  • 「AとBの二足の草鞋を履く」
    二つの職業や立場を「AとB」で具体的に示す形です。「会社員と作家の二足の草鞋を履く」「教師と演奏家の二足の草鞋を履く」などと使います。
  • 「二足の草鞋を履いている」
    二つの仕事や役目を現在も並行して続けていることを表す形です。「今も二足の草鞋を履いている」「長年、二足の草鞋を履いている」などと使います。
  • 「二足の草鞋を履き続ける」
    二つの活動を長期間にわたって続けることを述べる形です。「卒業後も二足の草鞋を履き続ける」「十年間、二足の草鞋を履き続けた」などと使います。

「二足の草鞋を履く」の例文

  • 彼女は昼間は会社で働き、夜には小説を書いて、会社員と作家の二足の草鞋を履いています。
  • 大学卒業後も競技を続ける彼は、選手と指導者の二足の草鞋を履くことになりました。
  • 本業が忙しくなってからも、彼女は店の経営をやめず、十年以上にわたって二足の草鞋を履き続けました

「二足の草鞋を履く」の類似表現

掛け持ち(かけもち)

「掛け持ち」は、一人で二つ以上の仕事や役目を同時に受け持つことです。

「アルバイトを三つ掛け持ちする」のように、二つに限らず使えます。

「二足の草鞋を履く」は、とくに性質の異なる二つの職業や役目を兼ねる場合に使いやすい表現です。

二刀流(にとうりゅう)

「二刀流」は、もとは二本の刀を使う剣術を指す言葉ですが、現在では二つの物事を同時にうまく行うことにも使われます。

「投手と打者の二刀流」のように、二つの分野で能力を発揮していることを評価する響きがあります。

「二足の草鞋を履く」は、二つの職業や役目を兼ねているという状態そのものを表す場合にも使えます。

「二足の草鞋を履く」の古い用例

1894年の落語『三人旅』(禽語楼小さん)には、「二足の草鞋は穿けねへちふ譬」という言い回しが記録されています。

現在の「履く」ではなく「穿く」の表記が使われ、「二足の草鞋は同時には履けない」というたとえが、明治時代にはすでに用いられていたことが分かります。

「二足の草鞋を履く」の間違いやすい使い方・表記

「二足」は、履物を数える「足」を使います。

「二束の草鞋を履く」と「束」を使う表記は適切ではありません。

また、「履く」は「穿く」と表記されることもあり、古い用例にも「二足の草鞋は穿けねへ」という形が見られます。

参考文献・出典

  • 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
  • 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「二足の草鞋を履く」項。
  • 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「二足の草鞋」項。
  • 北村孝一編『小学館 ことわざを知る辞典』小学館、2018年、「二足の草鞋を履く」項。
ABOUT ME
北澤篤史
ことわざ学会理事。ことわざ・慣用句・故事成語・四字熟語・漢字熟語を対象に、語源・由来、古い用例、文献上の変遷を研究している。2025年度ことわざ研究奨励賞受賞。著書に『〈試験に出る〉マンガでわかる すごいことわざ図鑑』『〈試験に出る〉マンガでわかる おもしろい四字熟語図鑑』『マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑』(いずれも講談社)がある。