鳴かず飛ばず
読み方:なかずとばず
「鳴かず飛ばず」の意味
長い間、目立った活躍や成果がなく、ぱっとしない状態でいることをいいます。
将来の活躍に備えて機会を待っている意味で使われることもありますが、現代では、なかなか成功しないことや活躍できないことを表す場合が多い慣用句です。
自分について自嘲的に言ったり、人や物事をやや低く評価したりする響きを伴うことがあります。
「鳴かず飛ばず」の語源・由来
中国の歴史書『史記』に伝わる故事に由来します。
「楚世家」では、楚の荘王が即位してから三年間、政治に力を入れずに過ごしていました。
家臣の伍挙は王をいさめるため、丘にいる鳥について「三年不蜚不鳴」、すなわち三年間、飛びも鳴きもしないのは何という鳥かと問いかけます。
荘王は、その鳥が飛べば天を突き、鳴けば人を驚かすだろうと答えました。
故事では、長く動かないことが、後の大きな活躍につながるものとして描かれています。
日本語では「三年飛ばず鳴かず」という形で、長く機会を待つ意味が伝わりました。
「鳴かず飛ばず」は「鳴かず」と「飛ばず」の順になった形で、現代では、長い間活躍できずにいる意味で広く使われています。
同じ趣旨の故事は、『史記』「滑稽列伝」や『呂氏春秋』にも、登場人物を変えた形で伝えられています。
「鳴かず飛ばず」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「鳴かず飛ばずの〜」
後ろに「時代」「生活」「状態」などの名詞を置きます。「鳴かず飛ばずの下積み時代」「鳴かず飛ばずの生活」などの形です。 - 「〜は鳴かず飛ばずだ/だった」
人や作品、商品などを主題として、その成果や人気が伸びない状態を述べます。「デビュー後の数年間は鳴かず飛ばずだった」「新商品は鳴かず飛ばずだ」などと使います。 - 「鳴かず飛ばずのまま〜」
目立った成果が出ない状態が続いていることを述べる形です。「数年間、鳴かず飛ばずのまま」「鳴かず飛ばずのまま引退する」などと続けます。
「鳴かず飛ばず」の例文
- 新人賞を取った後は仕事に恵まれず、十年近く鳴かず飛ばずの時期を過ごした。
- 大々的に売り出した新商品だったが、発売から半年たっても鳴かず飛ばずだった。
- 高校時代は鳴かず飛ばずだった彼が、大学に入ってから急成長し、全国大会で優勝した。
「鳴かず飛ばず」の類似表現
芽が出ない(めがでない)
努力や才能がまだ成功や評価につながらないことをいう表現です。
「役者として芽が出ない」「何年たっても芽が出ない」のように、人やその活動についてよく使われます。
「鳴かず飛ばず」は、作品の人気や商品の売れ行きなどにも使えます。
うだつが上がらない(うだつがあがらない)
地位や生活状態がなかなか向上しない人について使うことが多く、「鳴かず飛ばず」よりも本人を低く評価する響きが強い表現です。
商品や作品の売れ行きについて「うだつが上がらない」とは通常いいません。
「鳴かず飛ばず」の古い用例
尾崎士郎『人生劇場 残侠篇』(1936~37年)には、「それからの青成はまるきり鳴かず飛ばずさ」とあります。
ここでは、人物がその後目立った活躍をしていないことについて使われています。
1930年代には、すでに現在とほぼ同じ、長く活躍できずにいるという意味の「鳴かず飛ばず」が使われています。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「鳴かず飛ばず」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「三年飛ばず鳴かず」項。
- 円満字二郎編『小学館 故事成語を知る辞典』小学館、2018年、「鳴かず飛ばず」項。
- 北村孝一編『小学館 ことわざを知る辞典』小学館、2018年、「三年飛ばず鳴かず」項。
- 司馬遷『史記』巻四十「楚世家」。
