薹が立つ
読み方:とうがたつ
「薹が立つ」の意味
人が若い盛りや、ある目的に適していると考えられる年齢を過ぎることです。
文字どおりには、野菜などの花茎が伸び、かたくなって食べ頃を過ぎることをいいます。
「薹が立つ」の語源・由来
「薹」は、アブラナやホウレンソウ、フキなどに伸びる花茎のことです。
野菜は薹が伸びると、茎や葉がかたくなるなどして食べ頃を過ぎることがあります。
この植物についての表現が人にも当てはめられ、年齢や若さの盛りを過ぎることをいうようになりました。
「薹が立つ」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「〜は薹が立っている」
人を主語にして、その立場や呼び名から考えると年齢が高くなっていることを述べる形です。「新人というには薹が立っている」「若手としては薹が立っている」などと使います。 - 「〜には薹が立っている」
「〜」には、その人の年齢が問題となる役割や立場などが入ります。「新人選手には薹が立っている」「少年役には薹が立っている」などの形です。 - 「薹が立った〜」
連体形にして、後ろの人を表す名詞などを修飾します。「薹が立った新人」「薹が立った候補者」などと使えます。 - 「〜の薹が立つ」
植物について文字どおりに使う形です。「ホウレンソウの薹が立つ」「菜の薹が立った」などといいます。
「薹が立つ」の例文
- 長い下積みを経験しているので、新人と呼ぶには少し薹が立っているが、その演技力は高く評価されている。
- 祖母の若いころには、結婚が遅い人を薹が立ったなどと評することも珍しくなかったそうだ。
- 暖かい日が続いたため、畑のホウレンソウは急に薹が立った。
「薹が立つ」の類似表現
盛りを過ぎる(さかりをすぎる)
人だけでなく、人気、勢力、季節、植物など幅広いものに使えます。
「薹が立つ」よりも対象が広く、年齢について述べる場合も比較的直接的な悪口になりにくい表現です。
年が行く(としがいく)
年齢が高くなることをいう表現です。
「年が行く」だけでは、何かに適した時期を過ぎたという評価までは含みません。
「薹が立つ」の古い用例
1603~1604年の『日葡辞書』には、野菜などに薹が生じて伸びる使われ方の例が掲載されています。
17世紀初めには、植物について文字どおりに使う表現がすでに存在していました。
歌舞伎『染織竹春駒』(1814年)には、「護摩の灰の薹の立った」という表現があります。
植物ではなく人について「薹の立った」と述べており、19世紀初めには人の年齢や盛りを表す比喩的な使われ方がされていました。
「薹が立つ」の間違いやすい使い方・表記
人についての「薹が立つ」には、その人がふさわしい年齢や若い盛りを過ぎたと評価する響きがあります。
とくに婚期について使われてきた言葉でもあり、現代では相手の年齢を否定的に評価する失礼な表現と受け取られることがあり、本人に直接使う場合には注意が必要です。
「薹が立つ」のほか、古くは「薹に立つ」という形もありますが、現在一般的なのは「薹が立つ」です。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「薹が立つ」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「薹が立つ」「薹」項。
