暖簾を分ける
読み方:のれんをわける
「暖簾を分ける」の意味
商家などで、長年勤めた奉公人や店員に独立して店を持たせ、同じ屋号や看板を使うことを許すことです。
資金を援助したり、得意先を分けたりすることもあります。
「暖簾を分ける」の語源・由来
江戸時代の商家では、長く勤めた奉公人に独立を許し、主家の屋号や看板を使わせる「暖簾分け」の制度がありました。
資本や得意先を分けてもらう場合もあり、奉公人にとっては長年の勤めに対する報奨の一つでした。
江戸時代初期ごろから、商人や職人の暖簾には屋号や商標などが染め抜かれるようになり、暖簾そのものが店の営業や信用を象徴するようになりました。
そこから、主家の屋号や営業上の権利を受け継がせて独立させることを「暖簾を分ける」と呼ぶようになりました。
「暖簾を分ける」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「〜に暖簾を分ける」
「〜」には、独立を許される奉公人、店員、弟子などが入ります。「番頭に暖簾を分ける」「弟子に暖簾を分けた」などの形です。 - 「〜から暖簾を分けてもらう」
独立する側から述べるときに使う形です。「本店から暖簾を分けてもらう」「師匠から暖簾を分けてもらった」などと使います。 - 「暖簾を分けて〜」
独立や出店について後ろに続ける形です。「暖簾を分けて独立させる」「暖簾を分けて店を持たせる」などと続けます。
「暖簾を分ける」の例文
- 老舗の主人は、二十年以上働いてきた番頭に暖簾を分けることを決めました。
- 彼は長い修業を終え、師匠から暖簾を分けてもらって故郷に自分の店を開きました。
- 本店がかつて暖簾を分けた店は、それぞれ別に経営しながら同じ屋号を受け継いでいます。
「暖簾を分ける」の類似表現
暖簾分け(のれんわけ)
「暖簾を分ける」という行為や制度を名詞で表した言葉です。
「暖簾分けをする」「暖簾分けを受ける」のように使い、多くの場合、指している内容は「暖簾を分ける」と同じです。
独立する(どくりつする)
勤めていた店などを離れて自分で事業を始めることを広く表します。
「独立する」だけでは、元の店と同じ屋号を使う許可を得たり、得意先や資本を分けてもらったりしたことまでは示しません。
「暖簾を分ける」の古い用例
三遊亭円朝『怪談牡丹燈籠』には、1884年の用例として「暖簾を分けて戴いた」という言い回しがあります。
長年の奉公を経て独立を許されたことを述べる場面で使われており、明治時代前期には、現在と同じ商家の慣行を指す表現として用いられていました。
『精選版 日本国語大辞典』では、この作品が「暖簾を分ける」という言い回しが初めて世に出た例として挙げられています
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「暖簾を分ける」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「暖簾を分ける」項。
- 平凡社『改訂新版 世界大百科事典』「暖簾分け」項。
- 山川出版社『山川 日本史小辞典 改訂新版』2016年、「暖簾分け」項。
- 三遊亭円朝『怪談牡丹燈籠』第二十一回ノ下、1884年。
