下駄を預ける
読み方:げたをあずける
「下駄を預ける」の意味
物事の処理方法や判断、責任などを相手に一任することを意味します。
自分の進退や身の振り方について、他人の判断に任せる場合にも使われます。
「下駄を預ける」の語源・由来
下駄を人に預けてしまうと、返してもらうまで自分の意思でその場を離れにくくなります。
この状態になぞらえ、自分で処理や判断をせず、相手に任せることを「下駄を預ける」と言うようになったとされています。
「下駄を預ける」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「〜に下駄を預ける」
「に」の前には、判断や処理を任せる相手が入ります。「上司に下駄を預ける」「専門家に下駄を預ける」などの形です。 - 「〜については、〜に下駄を預ける」
何について判断を任せるのかを先に示す形です。「この件については部長に下駄を預ける」「今後の処遇は社長に下駄を預ける」などと使います。 - 「下駄を預けられる」
判断や処理を任された側から述べる受け身の形です。「急に下駄を預けられる」「すべて下駄を預けられた」のように使います。 - 「下駄を預けた以上〜」
すでに相手へ任せたことを前提として、その後の態度を述べる形です。「下駄を預けた以上、口を出さない」「下駄を預けた以上、結果を待つ」などと続けます。
「下駄を預ける」の例文
- 意見が最後までまとまらなかったため、最終的な判断は社長に下駄を預けることになりました。
- 自分の進退まで会社に下駄を預けるつもりはなく、転職するかどうかは自分で決めることにしました。
- 突然、交渉の処理をすべて下駄を預けられ、担当者は大きな責任を負うことになりました。
「下駄を預ける」の類似表現
一任する(いちにんする)
「一任する」は、判断や処理のすべてを特定の人に任せることを直接表す言葉で、「下駄を預ける」と意味がよく重なり、多くの場面で言い換えられます。
「対応を担当者に一任する」のように、改まった文章や仕事上の場面でも使いやすい表現です。
「下駄を預ける」には履物を預けて自分では動けなくなるという比喩がありますが、「一任する」にはそのような比喩性はありません。
丸投げする(まるなげする)
「丸投げする」は、本来自分が行うべき仕事や判断まで、ほとんどそのまま他人に任せることをいい、責任を果たさず他人に押しつけたという批判的な響きを伴うことが多い言葉です。
「下駄を預ける」は、信頼する相手や判断権を持つ相手に任せる場合にも使えるため、「丸投げする」ほど強い非難を必ず伴うわけではありません。
「下駄を預ける」の古い用例
『精選版 日本国語大辞典』では、近松門左衛門の浄瑠璃『天智天皇』の1692年の記述を、初めて世に出た例として挙げています。
そこには「げたを預け給ひしか」という言い回しが使われています。
漢字の「下駄」ではなく「げた」と記され、「預ける」に尊敬の補助動詞「給ふ」が続く言い方で、近世にはすでに、現在につながる比喩的な「下駄を預ける」が用いられていました。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「下駄を預ける」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「下駄を預ける」項。
- 北村孝一監修、佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年、「下駄を預ける」項。
