顔が潰れる
読み方:かおがつぶれる
「顔が潰れる」の意味
世間に対する面目や名誉を失うことです。
単に恥ずかしい思いをするというより、人との関係の中で保っていた立場や信用が損なわれる場合に使います。
「顔が潰れる」の語源・由来
この表現の「顔」は、身体の顔そのものではなく、社会に対する「体面・名誉」を指しています。
「潰れる」も、物が押されて形を失うという意味から離れ、保たれていたものが損なわれることをたとえにして表されています。
身体語を含む慣用句の研究でも、「顔が潰れる」は、「顔」と「潰れる」の両方がたとえとして働き、句全体で「世間に対する名誉を失う」という意味を作る表現と分析されています。
「顔が潰れる」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「〜の顔が潰れる」
「〜」には、面目や立場を損なわれる人が入ります。「上司の顔が潰れる」「紹介者の顔が潰れる」などの形です。 - 「〜ては顔が潰れる」
前半に、面目を失う原因となる行為や事態を置きます。「ここで断られては顔が潰れる」「約束を破られては顔が潰れる」などと使います。 - 「顔が潰れた/顔が潰れてしまう」
すでに面目を失った結果は過去形、そうなることを強く意識する場合は「〜てしまう」の形にできます。「推薦が裏目に出て顔が潰れた」「話を覆されれば顔が潰れてしまう」などの形です。
「顔が潰れる」の例文
- あれほど有望だと部長が推した企画を、十分な理由もなく取り下げれば、部長の顔が潰れる。
- 監督が強く推薦してくれた以上、練習を怠って期待を裏切れば、監督の顔が潰れてしまう。
- 地元の世話役が仲介してくれた話を一方的に反故にしたため、世話役はすっかり顔が潰れた。
「顔が潰れる」の類似表現
顔を潰す(かおをつぶす)
「顔が潰れる」が面目を失う側の状態を表すのに対し、「顔を潰す」は、だれかの面目を失わせる側から述べる言い方です。
「相手の顔を潰す」「親の顔を潰す」のように、傷つけられる人を「〜の顔を」で示します。
顔に泥を塗る(かおにどろをぬる)
人の名誉を傷つけたり、恥をかかせたりすることをいいます。
「親の顔に泥を塗る」のように、行為によって別の人の体面を損なう場面でよく使われます。
「顔が潰れる」は損なわれた側の状態を述べるため、文の組み立て方が異なります。
「顔が潰れる」の古い用例
人情本『清談松の調』(1840~1841年)には、「お顔の、潰れる様な事になる」という言い回しが見られます。
ここでの「顔が潰れる」も身体の損傷ではなく、主の面目が失われることを指しており、江戸時代後期には現在とほぼ同じ比喩的な意味で使われていました。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「顔が潰れる」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「顔が潰れる」「顔」「潰れる」「顔を潰す」「顔に泥を塗る」項。
- 沖裕子「比喩の形式と意味―日本語教育のための基礎的研究―」『信大日本語教育研究』第4号、2004年、2~15頁。
