引きも切らず
読み方:ひきもきらず
「引きも切らず」の意味
人や物事が、途切れる間もなく次々と続く様子を表します。
「客が次々に来る」「電話が絶えずかかってくる」といった、切れ目のない状態に使われます。
「引きも切らず」の語源・由来
「引きも切らず」は、切れ目がまったくないことを表す言い方から生まれたとされており、「切らず」は、ここでは途中で途切れないことを示しています。
古くは「引き切る」に、中が絶える、中断するという意味がありました。
「引きも切らず」という否定の形によって、流れが中断されない状態を表しています。
「引きも切らず」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「〜が引きも切らず〜」
次々に現れる人や物事を「〜が」で示し、その後に動作を続けます。「客が引きも切らず訪れる」「電話が引きも切らずかかる」などの形です。 - 「引きも切らずに〜」
「に」を付けて副詞的に使い、後ろの動作が絶え間なく続くことを示します。「引きも切らずに人が来る」「引きも切らずに注文が入る」などと使います。 - 「〜は引きも切らず」
次々と続くものを話題として先に示す形です。「問い合わせは引きも切らず」「見物人は引きも切らず」などと続けられます。
「引きも切らず」の例文
- 開店したばかりの店には、昼を過ぎても客が引きも切らず訪れていた。
- 大会で優勝した選手のもとには、取材の申し込みが引きも切らずに寄せられた。
- 大雨の翌朝、消防署には被害についての電話が引きも切らずかかってきた。
「引きも切らず」の類似表現
引っ切り無し(ひっきりなし)
使われ方にはかなり重なる部分があり、多くの場面で言い換えられます。
「引っ切り無し」は「引っ切り無しに電話が鳴る」のように使え、「引きも切らず」より日常会話でも使いやすい表現です。
矢継ぎ早(やつぎばや)
質問や指示、攻撃などを、短い間隔で次々に行う場合によく使われます。
「矢継ぎ早に質問する」のように、動作の速さや間隔の短さを含みやすい点が異なります。
「引きも切らず」の古い用例
14世紀後半に成立したとされる『太平記』巻七には、「毎日に引も切らず十方へ逃散る」とあります。
戦いに敗れた人々が毎日のように次々と逃げ散っていく場面で、「引も切らず」という言い回しが使われています。
現在と同じく、物事が途切れず続くことを表す使われ方です。
『太平記』巻十八にも、各地から人々が「引も切らず」馳せ参じるという記述があり、中世にはすでに、人が次々とやって来る様子にも用いられていました。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「引きも切らず」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「引」項。
- 『太平記』巻第七・巻第十八。
- 『ルーツでなるほど慣用句辞典』「引きも切らず」項。
