読み方:ふかくをとる

「不覚を取る」の意味

油断や不注意から思いがけない失敗をすることです。

失敗した本人にとって恥ずかしい、悔しい結果になったという含みを持つこともあります。

「不覚を取る」の語源・由来

「不覚」は古くから、油断して失敗を招くことや、覚悟が定まっていないことなどを表してきた言葉です。

日本では11世紀ごろの文献にも、失敗や不注意に関わる意味の「不覚」が使われています。

「取る」には、「後れを取る」「引けを取る」と同じように、好ましくない結果を身に受ける形で使われる言い回しがあります。

「不覚を取る」もこの形にあたり、中世にはすでに一つの表現として使われていました。

「不覚を取る」の使い方

次のような型がよく使われます。

  • 「〜に不覚を取る」
    「〜」には、対戦相手や競争相手などが入ります。「伏兵に不覚を取る」「格下の相手に不覚を取る」などの形です。
  • 「〜で不覚を取る」
    助詞「で」を使って、失敗した場面や状況を示します。「大事な試合で不覚を取る」「本番で不覚を取る」などと使います。
  • 「不覚を取って/不覚を取り〜」
    失敗したあとに起きたことを続ける形です。「不覚を取って敗れる」「不覚を取り、計画が狂う」などと続けます。
  • 「不覚を取らない/不覚を取ることなく〜」
    失敗を避けることを表す否定形です。「最後まで不覚を取らない」「不覚を取ることなく勝ち進む」などの形があります。

「不覚を取る」の例文

  • 優勝候補だったチームは、思いがけない強敵に不覚を取り、大会から姿を消した。
  • 慣れた作業だからと確認を省いた結果、思わぬところで不覚を取った
  • 彼は最後まで相手を侮らず、不覚を取ることなく勝利を収めた。

「不覚を取る」の類似表現

足をすくわれる(あしをすくわれる)

相手にすきを突かれて、思いがけず失敗したり敗れたりする場合に使います。

「足をすくわれる」は相手がこちらのすきにつけ込むことを表しやすいのに対し、「不覚を取る」は自分の油断や不注意による失敗にも広く使えます。

後れを取る(おくれをとる)

相手に先を越されたり、相手より劣った状態になったりすることを表します。

必ずしも油断や失敗が原因とは限らないため、「不覚を取る」とは使える場面が異なります。

「不覚を取る」の古い用例

『曾我物語』には、南北朝時代ごろの記述として「一度ふかくをとらぬ者なり」という言い回しが伝わっています。

俣野という人物について、相撲の大番勤めで都へ上り、一度も「ふかくをとらぬ」者だったと述べる箇所です。

現在の「不覚を取らない」にあたる言い回しが使われており、中世にはすでに「不覚を取る」という組み合わせが成立していたことが分かります。

参考文献・出典

  • 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
  • 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「不覚を取る」項。
  • 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「不覚」「不覚を取る」項。
  • 国立国語研究所「基本動詞ハンドブック」『取る・採る・執る』。
ABOUT ME
北澤篤史
ことわざ学会理事。ことわざ・慣用句・故事成語・四字熟語・漢字熟語を対象に、語源・由来、古い用例、文献上の変遷を研究している。2025年度ことわざ研究奨励賞受賞。著書に『〈試験に出る〉マンガでわかる すごいことわざ図鑑』『〈試験に出る〉マンガでわかる おもしろい四字熟語図鑑』『マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑』(いずれも講談社)がある。