読み方:あかごのてをひねる

「赤子の手を捻る」の意味

力の弱い相手を簡単に負かすことや、物事をきわめて容易に行うことを意味する慣用句です。

人を相手に使う場合は、実力や力の差が非常に大きいことを表すため、相手を弱いものとして見る響きを伴うことがあります。

「赤子の手を捻る」の語源・由来

「赤子」は、生まれて間もない赤ん坊のことです。

生まれたての赤ん坊の手や腕なら、力のある大人がたやすく動かせるというたとえから生まれました。

そこから、抵抗する力のない相手を簡単に扱うことや、物事を苦もなく行うことをいうようになりました。

古くは「手」だけでなく「腕」、「ひねる」だけでなく「ねじる」を使った言い方も見られます。

「赤子の手を捻る」の使い方

次のような型がよく使われます。

  • 「〜にとっては赤子の手を捻るようなものだ」
    ある人の実力から見れば、相手や物事が非常に簡単であることを表す形です。「この問題は彼にとっては赤子の手を捻るようなものだ」「熟練者にとっては赤子の手を捻るようなものだ」などと使います。
  • 「赤子の手を捻るように〜」
    「勝つ」「退ける」「解く」などの動作につなげます。「赤子の手を捻るように相手を退ける」「赤子の手を捻るように難問を解く」などの形です。

「赤子の手を捻る」の例文

  • 前年の優勝チームは予選で、相手を赤子の手を捻るように退けた。
  • 長年この機械を扱ってきた彼にとって、部品の交換など赤子の手を捻るようなものだった
  • 私たちが何時間も悩んだ問題を、先生は赤子の手を捻るように解いてみせた。

「赤子の手を捻る」の類似表現

朝飯前(あさめしまえ)

非常にたやすいことを表し、物事がどれだけ簡単かを表す多くの場面で言い換えられます。

「朝飯前」は「それくらいは朝飯前だ」のように、仕事や作業などが簡単であることを広く表せます。

相手との大きな実力差を表す意味は、「赤子の手を捻る」のほうがはっきりしています。

鎧袖一触(がいしゅういっしょく)

相手を苦もなく打ち負かすことを意味します。

勝負や戦いなど、相手のいる場面では「赤子の手を捻る」と近い表現です。

一方、単に仕事や問題が簡単だという場合、「鎧袖一触」は勝負や闘争の場面に限定された言葉なので使いにくく、「赤子の手を捻る」のほうが幅広く使えます。

「赤子の手を捻る」の古い用例

慶応元年(1865年)の歌舞伎『鶴千歳曾我門松(野晒悟助)』には、「彼奴等五人七人は、赤子の腕を捻ぢるも同然」とあります。

現在よく使われる「手」ではなく「腕」、「ひねる」ではなく「ねじる」に当たる「捻ぢる」が使われています。

複数の相手を容易に負かせるという意味で、現在の「赤子の手を捻る」に通じる使われ方です。

後の文学作品では「手」を使った形も広く使われています。

織田作之助の『勝負師』には「赤子の手をねじるように」とあり、将棋の対局で一方があっけなく攻め倒された場面に使われています。

参考文献・出典

  • 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
  • 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「赤子の手を捻る」項。
  • 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「赤子の腕を捻る」項。
  • 織田作之助『勝負師』。
ABOUT ME
北澤篤史
ことわざ学会理事。ことわざ・慣用句・故事成語・四字熟語・漢字熟語を対象に、語源・由来、古い用例、文献上の変遷を研究している。2025年度ことわざ研究奨励賞受賞。著書に『〈試験に出る〉マンガでわかる すごいことわざ図鑑』『〈試験に出る〉マンガでわかる おもしろい四字熟語図鑑』『マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑』(いずれも講談社)がある。