読み方:めーとるをあげる

「メートルを上げる」の意味

酒を飲んで勢いづき、盛んに話したり騒いだりすることです。

単に酔うだけでなく、酔いが回って気分が高まり、威勢のよいことを言う様子まで含む表現です。

さらに酒を飲む量が増える場面で「メートルが上がる」とも言ったりします。

やや古風な言い方で、現代の日常会話ではあまり使われなくなっています。

「メートルを上げる」の語源・由来

ここでいう「メートル」は、長さの単位ではなく、ガスや電気などの量を測る計量器を指す古い呼び方です。

計量器の目盛りや針が上がることになぞらえて「メートルを上げる」という言い方が生まれ、気勢が高まることや、酒を飲んで勢いづくことをいうようになったと考えられています。

『新編大言海』にも、計量器を意味する「メエトル」から転じて、熱気のあることを言ったり、気炎を吐いたりする意味になったとする説明があります。

「メートルを上げる」の使い方

次のような型がよく使われます。

  • 「〜でメートルを上げる」
    「〜で」には、酒を飲んでいる場所や集まりが入ります。「居酒屋でメートルを上げる」「宴会でメートルを上げる」などの形です。
  • 「〜を飲んでメートルを上げる」
    酒を飲むことと結び付けて使う形です。「日本酒を飲んでメートルを上げる」「祝い酒でメートルを上げる」などと使います。
  • 「メートルを上げて〜」
    酒で勢いづいた状態を示し、その後の言動へ続けます。「メートルを上げて大いに語る」「メートルを上げて騒ぐ」などの形です。
  • 「メートルを上げた」
    過去の宴会や酒席について述べるときにも使えます。「昨夜はずいぶんメートルを上げた」「仲間とメートルを上げた」などと使います。

「メートルを上げる」の例文

  • 同窓会では久しぶりに顔を合わせた仲間たちが、酒を酌み交わしながらメートルを上げた
  • 優勝祝いの席では監督までメートルを上げて、昔の苦労話を楽しそうに語っていた。
  • 父は若いころ、給料日になると同僚と飲みに出かけ、夜遅くまでメートルを上げたそうだ。

「メートルを上げる」の類似表現

気炎を上げる(きえんをあげる)

威勢のよいことを盛んに言う表現で、酒を飲んでいるかどうかは問いません。

「メートルを上げる」は酒席と結び付くことが多いのに対し、「気炎を上げる」は「改革を唱えて気炎を上げる」のように、議論や主張が盛り上がっている場面にも使えます。

管を巻く(くだをまく)

酒に酔って、同じことを何度も言ったり、取りとめのない話をしたりすることです。

「管を巻く」には周囲を困らせるような否定的な響きがあります。

「メートルを上げる」は、酒で威勢がよくなったり盛り上がったりする様子をいい、必ずしも迷惑な酔い方とは限りません。

「メートルを上げる」の古い用例

巌谷小波の『駒のいななき』(1916年)には、「その代り集める方には、一層メートルをあげて来た」という言い回しが使われています。

ここでは酒を飲む話ではなく、物を集めることへの熱の入れ方がさらに高まった、という意味で使われています。

大正時代には、現在よく知られている「酒を飲んで勢いづく」という意味だけでなく、意気込みや勢いを高めるという、より広い使い方もあったことが分かります。

同時期には「メヱトルを上げる」という表記の言い方も残っています。

参考文献・出典

  • 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
  • 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「メートルを上げる」項。
  • 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「メートルを上げる」項。
  • ジャパンナレッジ「日国友の会」、「メートルをあげる〔メートルを上げる〕」。
  • 読売テレビ、道浦俊彦「とっておきの話2131『メートルが上がる』」。
ABOUT ME
北澤篤史
ことわざ学会理事。ことわざ・慣用句・故事成語・四字熟語・漢字熟語を対象に、語源・由来、古い用例、文献上の変遷を研究している。2025年度ことわざ研究奨励賞受賞。著書に『〈試験に出る〉マンガでわかる すごいことわざ図鑑』『〈試験に出る〉マンガでわかる おもしろい四字熟語図鑑』『マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑』(いずれも講談社)がある。