飼い犬に手を噛まれる|意味・使い方・例文
読み方: かいいぬにてをかまれる
意味: 目をかけていた者から思いがけない裏切りや害を受けること。
「飼い犬に手を噛まれる」の意味
世話をしたり、かわいがったりしていた相手に裏切られた驚きや、腹立たしさを含む表現です。自分に従い、恩を感じているはずだと思っていた相手から攻撃を受けたときの、強い失望が込められています。
「飼い犬」というたとえから、話し手が相手を自分の配下や庇護する立場の者と見ていることも伝わります。そのため、人に向かって直接使うと、相手を自分より下に見ている尊大な言い方になることがあります。
「飼い犬に手を噛まれる」の使い方
部下、弟子、従業員、後輩など、日頃から面倒を見ていた相手に裏切られた場面で使います。対等な友人や目上の人に使うと、その人物を自分の配下のように扱う表現になるため、関係性に合わない場合があります。
文の中では、「飼い犬に手を噛まれた思いだ」「飼い犬に手を噛まれた気分だ」「飼い犬に手を噛まれるとはこのことだ」のような形がよく使われます。
単に相手が自分の意見に反対したり、独立したりしただけではなく、秘密を漏らす、財産を奪う、敵対して害を与えるなど、信頼を損なう行為を受けた場面に用います。
「飼い犬に手を噛まれる」の例文
- 長年育ててきた部下が顧客情報を競合会社へ持ち出し、社長は飼い犬に手を噛まれた思いだった。
- 弟子に自分の技術を盗まれた職人は、「飼い犬に手を噛まれるとはこのことだ」と肩を落とした。
- 信頼して会計を任せていた従業員に売上金を持ち逃げされ、店主は飼い犬に手を噛まれたような気分になった。
「飼い犬に手を噛まれる」の類似表現
恩を仇で返す(おんをあだでかえす)
「恩を仇で返す」は、世話になった相手へ恩返しをせず、かえって害を加える側の行為を非難する表現です。恩を受けた事実があれば、二人の地位や年齢に明確な上下関係がなくても使えます。
「飼い犬に手を噛まれる」は、裏切られた側から見た表現で、配下の者やかわいがっていた者から思いがけない攻撃を受けたことを表します。
後足で砂をかける(あとあしですなをかける)
「後足で砂をかける」は、世話になった相手を裏切るだけでなく、去りぎわにさらに迷惑をかける行為を指します。退職や別離など、相手のもとを離れる場面と結び付く表現です。
「飼い犬に手を噛まれる」には、相手が去るという意味はありません。面倒を見ていた者から、予想外の反抗や攻撃を受けたことを中心に述べます。
「飼い犬に手を噛まれる」の語源・成り立ち
自分の手で餌を与えて養ってきた犬に、その手を噛まれる情景から生まれたたとえです。世話をした相手から、恩に反する仕打ちを受ける人間関係を表すようになりました。
古くは「手飼いの犬に手を食わるる」「飼う犬に手を食わるる」などと表現されました。「手飼い」や「飼う」には、自分の手で動物に食べ物や水を与えて養うという意味があります。現在の「飼い犬に手を噛まれる」という形は、江戸時代中期以降に定着しました。
「飼い犬に手を噛まれる」の古い用例
享保6年(1721年)の浄瑠璃『津国女夫池』には、次の用例が見られます。
思ひもよらぬかひいぬに手をくはれ給ふ御運の末
「思いも寄らない飼い犬に手を食われた」という形で、信頼していた者から予想外の害を受ける不運を表しています。「くはれ」は「食われ」の古い表記で、現在の「噛まれる」に当たります。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「飼い犬に手を噛まれる」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「飼犬に手を食わる」項。
- 北村孝一編『小学館 ことわざを知る辞典』小学館、2018年、「飼い犬に手を噛まれる」項。