冷静沈着
読み方:れいせいちんちゃく
「冷静沈着」の意味
落ち着いていて、物事に動じず、慌てないことです。
人物の性格だけでなく、判断や行動の落ち着いた様子についても使います。
「冷静沈着」の語源・由来
「冷静沈着」は、近い意味を持つ「冷静」と「沈着」を重ねて構成された語です。
「沈着」の、人が落ち着いて物事に動じないという用法は、福沢諭吉『西洋事情』(1866~70年)に「鎮着」の表記で見られます。
「冷静」は、徳富蘆花『思出の記』(1900~01年)に、感情に動かされず落ち着いているという現在につながる意味の用例があります。
現在の「冷静沈着」という四字の形がいつ成立したのかは明確ではありません。
「冷静沈着」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「冷静沈着な~」
後ろに「人物」「態度」「対応」「行動」などを続けます。「冷静沈着な人物」「冷静沈着な対応」などの形です。 - 「冷静沈着に~」
後ろに動作を続けます。「冷静沈着に対処する」「冷静沈着に行動する」などと使います。 - 「~は冷静沈着だ」
人物の性格や、そのときの様子を述べるときに使います。「彼は冷静沈着だ」などの形です。
「冷静沈着」の例文
- 突然の停電が起きても、責任者は冷静沈着に状況を確かめ、避難の指示を出しました。
- 彼女は冷静沈着な交渉役で、意見が対立する会議でも要点を整理して話を進めます。
- 延長戦に入っても主将は冷静沈着で、焦る仲間に次のプレーへ集中するよう声をかけました。
「冷静沈着」の類似表現
泰然自若
読み方:たいぜんじじゃく
「泰然自若」は、大きな出来事を前にしても普段と変わらず、どっしり構えている様子をいいます。
「泰然自若として」「泰然自若たる」の形が代表的で、判断や対応を表す語と直接結び付けやすい「冷静沈着」とは使われ方に違いがあります。
明鏡止水
読み方:めいきょうしすい
「明鏡止水」は、わだかまりや邪念がなく、澄みきって静かな心の状態をたとえた言葉です。
「明鏡止水の心境」のように、外に現れる行動よりも心の内側の状態を述べる形で使われます。
「冷静沈着」の古い用例
1924年(大正13年)に東京府が編纂した『大正震災美績』の「凡例」には、関東大震災の際の善行を調査する基準の一つとして、
「危難に臨み冷静沈着に大事を処理し得たる実例」
とあります。
「冷静沈着に」と後ろの動作へつなげる形で、危険な状況における落ち着いた行動を扱っています。
大正13年には、現在にも通じる副詞的な使い方が公的な文献で用いられていました。
「冷静沈着」の間違いやすい使い方・表記
語順を入れ替えた「沈着冷静」という形も実際に使われています。
「沈着冷静」を単純な誤記とすることはできません。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「冷静沈着」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「冷静」「沈着」項。
- 重信幸彦「ある『善行』調査員の視線―関東大震災・東京府善行美績調査員の手記から」『先端社会研究』第2号、2005年。
- 全国社会福祉協議会「関東大震災当時の救護活動―関東大震災における民間社会事業、ボランティアの取り組みから今を考える―」、2023年。
