安心立命
読み方:あんしんりつめい
「安心立命」の意味
安心立命とは、自分にできることを尽くしたうえで天命を受け入れ、どのような状況でも心を乱されず、落ち着いていることです。
仏教、とくに禅では、悟りによって揺るがない心のよりどころを得た境地を指します。
「安心立命」の語源・由来
「立命」は、『孟子』尽心章句上の
「夭寿不貳、修身以俟之、所以立命也」
に見られる語です。
寿命の長短によって志を変えず、身を修めながら天命を待つことを「立命」としています。
中国の禅籍では、現在の「安心立命」ではなく「安身立命」という形が確認できます。
『景徳伝灯録』巻十の湖南長沙景岑禅師の章には、僧への問いとして
「汝向什麼處安身立命?」
とあります。
「安心立命」は、この「安身立命」から転じたものとされ、仏教で心の安定した境地を表す「安心」と結びついた形です。
したがって、『景徳伝灯録』の原文に現在と同じ「安心立命」の四字がそのまま現れるわけではありません。
「安心立命」の使い方
次のような形で使われます。
- 「安心立命の境地」
「求める」「達する」「いる」などを続けます。「安心立命の境地を求める」などの形です。 - 「安心立命する」
「そこに安心立命する」のように、心のよりどころが定まった状態を述べるときに使います。 - 「安心立命を得る」
宗教や思想、生き方について述べる文章で使われることがあります。
「安心立命」の例文
- 長い修行を重ねた僧は、ようやく安心立命の境地に達しました。
- 事業を後継者に託した彼は、やるべきことは尽くしたと考え、安心立命して晩年を過ごしました。
- 人生について悩み続けた彼女は、哲学を学ぶうちに自分なりの安心立命を得ました。
「安心立命」の類似表現
泰然自若(たいぜんじじゃく)
どのような出来事に直面しても、落ち着いて動じない様子を表します。
目の前で見せる態度や振る舞いについて使いやすく、天命や信仰という背景までは含みません。
安心決定(あんじんけつじょう)
浄土教では、阿弥陀仏の誓いを信じて疑いがなくなることをいいます。
そこから、広く信念を得て心が定まる意味にも使われるようになりました。
信仰上の確信を述べる場合には、「安心立命」より意味の範囲が限定されています。
「安心立命」の古い用例
日本語の早い用例として、1891年(明治24年)の幸田露伴『いさなとり』に
「安心立命(アンシンリツメイ)の地」
という表現があります。
「地」を伴い、心のよりどころとなる境地を指しており、この時期には現在と同じ四字の表記と「あんしんりつめい」の読みが文学作品で使われていました。
「安心立命」の間違いやすい使い方・表記
一般には「あんしんりつめい」と読みます。
仏教では「あんじんりゅうめい」「あんじんりゅうみょう」などの読みも用いられるため、仏教書や禅の解説では読み方が異なる場合があります。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「安心立命」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「安心立命」項。
- 浄土宗大辞典編纂実行委員会編『新纂浄土宗大辞典』浄土宗、2016年、「安心立命」項。
- 『孟子』尽心章句上。
- 中華民国教育部『成語典』「安身立命」項。
- 公益財団法人日本漢字能力検定協会『漢字ペディア』「安心立命」項。
