余裕綽綽
読み方:よゆうしゃくしゃく
「余裕綽綽」の意味
ゆったりと落ち着いていて、少しも慌てないさまを表す四字熟語です。
実力・時間・資力などにゆとりがあり、切迫した様子がない場合にも使われます。
「余裕綽綽」の語源・由来
もとになった表現は、中国の古典『孟子』「公孫丑下」にあります。
孟子が自分の出処進退について述べた箇所に、
「豈不綽綽然有餘裕哉」
とあります。
「綽綽然」はゆったりとしてゆとりのあるさま、「餘裕」はゆとりがあって窮屈でないことです。
孟子は、自分には官職も、君主へ意見する職務上の責任もないため、進退を自由に決められると述べています。
原典には現在の「余裕綽綽」という四字がその順序で続いているわけではなく、「綽綽然」と「餘裕」が「有」を挟んで現れます。
現在の四字形がいつ成立したかは明確ではありません。
「余裕綽綽」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「余裕綽綽として〜」
後ろに動作や態度を続けます。「余裕綽綽として構える」「余裕綽綽として答える」などの形です。 - 「余裕綽綽たる〜」
後ろに「態度」「表情」「面持ち」などを続けます。「余裕綽綽たる態度」「余裕綽綽たる面持ち」などと使います。 - 「余裕綽綽だ」
人物やそのときの様子について述べます。「本番を前にしても余裕綽綽だ」などの形です。
「余裕綽綽」の例文
- 面接の順番を待つ間も、彼女は余裕綽綽として資料に目を通していました。
- 相手に先制点を許しても、王者は余裕綽綽たる表情を崩しませんでした。
- 締め切りまで三日しかないのに、担当者だけは余裕綽綽です。
「余裕綽綽」の類似表現
泰然自若(たいぜんじじゃく)
思いがけない出来事や厳しい状況に直面しても、平静を失わない人について使います。
危機や重圧の中でも「動じない」ことを表したい場面に向いています。
従容不迫(しょうようふはく)
急いだり取り乱したりせず、ゆったりと振る舞うさまを表す文章語です。
行動や物事の進め方に慌ただしさがないことを表す場合に使われます。
「余裕綽綽」の古い用例
木下杢太郎が1910年(明治43年)5月29日の『読売新聞』に発表した「白馬会を評す」には、
「余裕綽々たる態度」
という形が使われています。
明治末期には、現在と同じ四字熟語を「たる」で名詞につなぐ用法が見られました。
1914年(大正3年)11月5日の『東京日日新聞』には、
「英国の財力 : 余裕綽々、独逸の苦痛」
という社説の見出しがあります。
ここでは人物の態度ではなく、イギリスの財力に十分なゆとりがあることを表す語として使われています。
「余裕綽綽」の間違いやすい使い方・表記
「余裕綽々」は、「綽綽」の二字目を同じ漢字の繰り返しを示す「々」で表した表記で、誤りではありません。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「余裕綽綽」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「余裕綽綽」項。
- 『孟子』「公孫丑下」。
- 木下杢太郎「白馬会を評す」『読売新聞』1910年5月29日、7頁。
- 「英国の財力 : 余裕綽々、独逸の苦痛」『東京日日新聞』1914年11月5日。神戸大学経済経営研究所所蔵「新聞記事文庫」。
