横行闊歩
読み方:おうこうかっぽ
「横行闊歩」の意味
「横行闊歩」とは、思いのままに大いばりで歩き回ること、または周囲をはばからず勝手に振る舞うことです。
多くは、好ましくない人物や集団の振る舞いを批判的に表すときに使います。
「横行闊歩」の語源・由来
「横行闊歩」は、現在の四字形をそのまま中国古典の一句として示す確かな出典は確認できません。
語形は「横行」と「闊歩」という、古くから使われてきた二語からなります。
「横行」は中国の『史記』伯夷列伝にも見え、盗跖について
「聚黨數千人橫行天下」
と記されています。
数千人の仲間を集めて天下を思うままに動き回ったという文脈です。
「闊歩」は、魏の曹丕が著した「太宗論」に
「得闊步高談,無危懼之心」
とあります。
この一節は『三国志』魏書・文帝紀の注が引く『魏書』に残されており、「闊歩」は恐れることなく堂々と歩く意味で使われています。
ただし、これらの古典には「横行闊歩」という四字の連続はありません。
現在の四字形を誰がいつ作ったのかは明確ではありません。
「横行闊歩」の使い方
次のような形で使われます。
- 「~が横行闊歩する」
前には人物や集団などを置きます。「ならず者が横行闊歩する」「悪質な業者が横行闊歩する」などの形です。 - 「~を横行闊歩する」
「街」「繁華街」「世間」など、動き回る場所や範囲を前に置きます。「街を横行闊歩する」のように使います。 - 「~で横行闊歩する」
活動している場所を「で」で示します。「歓楽街で横行闊歩する」「組織内で横行闊歩する」などと続けます。
「横行闊歩」の例文
- 深夜になると、迷惑行為を繰り返す一団が駅前を横行闊歩するようになり、住民から苦情が相次ぎました。
- 権力を盾にした幹部が社内で横行闊歩している状態では、部下も率直な意見を言いにくくなります。
- かつてこの地域では武装集団が横行闊歩したものの、治安の回復とともに姿を消しました。
「横行闊歩」の類似表現
横行跋扈(おうこうばっこ)
「のさばって勝手気ままに振る舞う」という意味が強く、悪人や好ましくない勢力が抑えられずにはびこる場面に向いています。
「横行闊歩」が堂々と歩き回る姿を含むのに対し、「横行跋扈」は勢力を振るってのさばることに重点があります。
傍若無人(ぼうじゃくぶじん)
周囲に人がいないかのように、自分勝手な言動をすることです。
「傍若無人な態度」「傍若無人に振る舞う」のように、態度や言動を直接表す場合に使いやすく、ある場所を大いばりで歩き回るという要素は必要ありません。
「横行闊歩」の古い用例
日本語の早い用例として、徳富蘇峰の『将来之日本』があります。
同書は1886(明治19)年に経済雑誌社から刊行され、
「脱刀して横行濶歩する者のごとく」
などの形で使われています。
ここでは、人が周囲を恐れず堂々と歩く姿を比喩に用いています。
当時の表記は「横行濶歩」です。
「濶」は「闊」の異体字であり、別の四字熟語ではありません。
明治期の夏目漱石『吾輩は猫である』にも「横行濶歩」とあり、1948年の中山義秀『テニヤンの末日』では現在と同じ「横行闊歩」の表記が使われています。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「横行闊歩」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「横行闊歩」「横行」「闊歩」各項。
- 司馬遷『史記』巻六十一「伯夷列伝」。
- 陳寿『三国志』巻二「魏書二・文帝紀第二」裴松之注引『魏書』、曹丕「太宗論」。
- 徳富蘇峰『将来之日本』経済雑誌社、1886年。
- 公益財団法人日本漢字能力検定協会『漢字ペディア』「闊」項。
