奇想天外
読み方:きそうてんがい
「奇想天外」の意味
思いもよらないほど風変わりで、普通の発想の範囲を大きく外れていること、またそのさまをいいます。
発想・計画・物語・行動などについて、強い意外性や驚きを感じたときに用いられ、独創性を評価する場合にも、突飛さを指摘する場合にも使われます。
「奇想天外」の語源・由来
「奇想天外」は、「奇想、天外より落つ」または「奇想、天外より来たる」という表現が縮まってできた語です。
「天外」は、空のはるかかなたを指し、思いもよらない所という意味を持ちます。
ただし、確認した資料の範囲では、古代中国の特定の故事や古典に「奇想天外」という現在と同じ四字形がそのまま存在するとは認められません。
江戸後期の日本の漢詩の世界には、これにつながる表現が見られます。
広瀬旭荘が1823年(文政6年)に作った詩を収める『梅墩詩鈔』には、師の評として
「奇想自天落来」
と記されています。
ここでの「奇想」は単に風変わりというだけでなく、並外れてすぐれた着想をほめる語として使われています。
さらに、東夢亭の『鉏雨亭随筆』(1852年・嘉永5年)には、漢詩への評として
「奇想自天外落」
という形があります。
「天外」を含むこの表現は、後の「奇想、天外より落つ」にきわめて近い形です。
江戸末期から明治期には「奇想自天外来」「奇想自天外落」なども漢詩批評に用いられました。
これらの長い表現から現在の四字形がいつ省略・定着したのかは、明確には分かっていません。
「奇想天外」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「奇想天外な〜」
後ろに「発想」「アイデア」「計画」「物語」「行動」などを続けます。「奇想天外な発想」「奇想天外な計画」などの形です。 - 「奇想天外の〜」
「トリック」「趣向」「物語」などを続けます。「奇想天外のトリック」のように使います。 - 「〜は奇想天外だ」
発想や企画、出来事などについて、普通の予想を大きく超えていると評するときに使います。
「奇想天外」の例文
- 廃熱を利用して建物全体を冷やすという奇想天外な案が、学生たちから提出されました。
- この推理小説には、犯人の正体だけでなく事件そのものの前提を覆す奇想天外のトリックが仕掛けられています。
- 子どもが考えた「町の上を移動する空中図書館」という発想は奇想天外だが、聞く人をわくわくさせました。
「奇想天外」の類似表現
斬新奇抜(ざんしんきばつ)
それまでにない新しさと、普通とは異なる独特さを備えていることをいいます。
「斬新奇抜」は「新しい」という点をはっきり含むため、デザインや方法、アイデアなどの新規性を評価するときに向いています。
荒唐無稽(こうとうむけい)
話や考えに根拠がなく、現実性に乏しいことをいいます。
「荒唐無稽」はでたらめさや実現性のなさを問題にする語で、否定的な評価になりやすい点が異なります。
「奇想天外」の古い用例
明治41年(1908年)には、篠原嶺葉による『奇想天外:探奇小説』が大学館から刊行されています。
文章中の一語ではなく書名ですが、この時点ですでに「奇想天外」という四字のまとまりが日本で題名に用いられていたことが分かります。
長与善郎の『竹沢先生と云ふ人』(1924~25年)には、
「詩人がミューズから奇想天外なイデーを受胎するのは多くは真夜中で」
という用例があります。
「奇想天外な+名詞」という、現在にも続く形が大正末期には文章中で使われていました。
「奇想天外」の間違いやすい使い方・表記
「奇想天涯」と書くのではなく、標準的な表記は「奇想天外」です。
「天外」は、もとの表現に見られる「天のはるかかなた」という意味の語です。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「奇想天外」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「奇想天外」項・「奇想天外より落つ」項。
- 公益財団法人日本漢字能力検定協会「漢字ペディア」、「奇想天外」項。
- 円満字二郎「四字熟語根掘り葉掘り87:若き天才の『奇想天外』な漢詩」、公益財団法人日本漢字能力検定協会、2021年。
- 文化庁『著作権者不明等の場合の裁定制度 裁定データ(平成27年度)』。
