白紙撤回
読み方:はくしてっかい
「白紙撤回」の意味
「白紙撤回」とは、一度決まったことや、すでに示した計画・方針などを、何もなかったものとして取り下げることです。
一部分を直したり実施を延期したりするのではなく、それまでの決定を前提にしない状態へ戻す含みがあります。
「白紙撤回」の語源・由来
「白紙」は、もともと白い紙や何も書かれていない紙を指す言葉です。
そこから、先入観のない状態や、何もなかったもとの状態をたとえる意味が生まれました。
比喩的な「白紙」は中江兆民『一年有半』附録(1901年)に用例があり、「白紙に返す」という言い方も高田保『第3ブラリひょうたん』(1951年)に見られます。
「撤回」は、一度出したものや言い出した事柄を後から取り下げることです。
日本語では1885年の『伊藤特派全権大使復命書附属書類』に用例が確認されています。
「白紙撤回」は、こうした比喩的な「白紙」と「撤回」が結びついた表現です。
特定の中国古典の故事をもとにした四字熟語ではなく、現在の四字形が成立した詳しい時期や経緯は明確ではありません。
「白紙撤回」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「〜を白紙撤回する」
前には「計画」「方針」「決定」「案」などを置きます。「建設計画を白紙撤回する」などの形です。 - 「〜の白紙撤回を求める」
相手が決めた方針などを取り下げるよう要求するときに使います。「値上げ案の白紙撤回を求める」などと続けます。 - 「〜が白紙撤回される」
取り下げられる側を主語にします。「新制度が白紙撤回される」などの形です。
「白紙撤回」の例文
- 住民から多くの反対意見が寄せられ、市は施設の建設計画を白紙撤回した。
- 労働組合は、新しい勤務制度の白紙撤回を求めて会社側と交渉を続けた。
- 費用が当初の予想を大幅に上回ったため、再開発案は白紙撤回されることになった。
「白紙撤回」の類似表現
前言撤回(ぜんげんてっかい)
「前言撤回」は、以前に述べた発言や意見を取り消すことです。
対象が「前に言ったこと」に限られるため、建設計画や制度そのものを取り下げる場合には「白紙撤回」のほうが広く使えます。
白紙に戻す(はくしにもどす)
意味は非常に近く、多くの場面で言い換えられます。
「計画を白紙に戻す」「交渉を白紙に戻す」のように、これまでの経緯をいったん取り払って最初の状態へ戻すことを述べる言い方です。
「白紙撤回」の古い用例
京都大学大学文書館には、京大四・五月行動委員会が1961年5月23日に作成したビラが残っています。
その題名には、
「臨教反対、学生部次長制白紙撤回!」
とあり、「白紙撤回」が制度を取り下げるよう求める言葉として使われています。
少なくとも1961年には、現在と同じ四字の形が日本語の社会運動関係文書で用いられていたことが分かります。
「白紙撤回」の間違いやすい使い方・表記
「白紙撤回」は、単なる「見直し」や「一部修正」とは異なります。
元の案を残したまま内容だけを変更する場合には、「計画を修正する」「方針を見直す」などとするほうが内容を正確に表せます。
また、「撤回」は「撤廻」などとは書かず、「白紙撤回」が一般的な表記です。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「白紙撤回」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「白紙撤回」「白紙」「撤回」「白紙に返す」項。
- 京都大学大学文書館所蔵「政治暴力防止法粉砕! 臨教反対、学生部次長制白紙撤回! 全京大の学友諸君、ゼネストを含む断固たる行動で起ち上ろう!」、京大四・五月行動委員会、1961年5月23日。
