表裏一体
読み方:ひょうりいったい
「表裏一体」の意味
「表裏一体」は、相反して見える二つのものが根本では一つであること、または二つのものが密接に結びついて切り離せない関係にあることです。
対立する二面だけでなく、互いに結びついて一つの働きをする二つの要素についても使われます。
「表裏一体」の語源・由来
現在と同じ四字形そのものの「表裏一體」は、中国・梁代の劉勰が著した文学理論書『文心雕龍』巻九「附會」にすでに見えます。
劉勰は六朝期後半の文学理論家で、『文心雕龍』は文章の種類や構成、表現方法などを体系的に論じた書物です。
「附會」篇には、
首尾周密,表裏一體,此附會之術也。
とあります。
文章を組み立てるとき、さまざまな内容や言葉を乱れたままにせず、初めから終わりまで一篇として統一する方法を説く中で使われた語句です。
原典では文章論の文脈ですが、現代日本語では文章に限らず広い対象に用いられています。
ただし、『文心雕龍』のこの語句から日本語の「表裏一体」へどのような経路で受け継がれたのかは、確認できる資料だけでは特定できません。
「表裏一体」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「AとBは表裏一体だ」
二つの事柄を並べ、その結びつきを直接述べます。「成功と失敗は表裏一体だ」などの形です。 - 「表裏一体の〜」
後ろには「関係」「もの」などを続けます。「表裏一体の関係」の形がよく見られます。 - 「AとBが表裏一体となる」
二つの要素が組み合わさって働くことを述べます。「理論と実践が表裏一体となる」などと使います。 - 「表裏一体をなす」
二つのものが一つのまとまりを作ることを述べる、文章語で使われる形です。
「表裏一体」の例文
- 新しいサービスの便利さと個人情報を扱う危険は、表裏一体だと考えて対策を進める必要があります。
- 注目を集める選手にとって、大きな期待と重圧は表裏一体の関係にあります。
- この学校では、教室で学ぶ知識と地域での体験が表裏一体となるように授業が組み立てられています。
「表裏一体」の類似表現
一心同体(いっしんどうたい)
二人以上の人が心を一つにして行動することをいいます。
人間同士の強い結びつきに使うのが中心なので、利点と欠点、原因と結果など人以外の二つの事柄を扱う場合とは使える範囲が異なります。
不即不離(ふそくふり)
二つのものが、近づきすぎることも離れることもない関係をいいます。
「不即不離の関係」のように使い、一つに結びついて切り離せない場合ではなく、「つかず離れず」の距離を保つ場合に適した語です。
「表裏一体」の古い用例
日本語では、井上円了『真理金針』続々編に古い用例があります。
同書は1887年(明治20年)に刊行され、
「聖道浄土、表裏一体の関係を全く知らざる者のごとし」
と記されています。
聖道門と浄土門を互いに排斥する当時の仏教界を論じる箇所で用いられており、少なくとも明治20年には「表裏一体の関係」という形が日本語の著作に現れていました。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「表裏一体」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「表裏一体」項。
- 劉勰『文心雕龍』巻九「附會」。
- 井上円了『真理金針』続々編、法蔵館、1887年。
- 公益財団法人日本漢字能力検定協会『漢字ペディア』「表裏一体」項。
