試行錯誤
読み方:しこうさくご
「試行錯誤」の意味
試みと失敗を繰り返しながら、目的に合う方法や問題の解決策を探していくことです。
単に失敗を重ねるだけでなく、その結果をもとに別の方法を試していく過程を指します。
「試行錯誤」の語源・由来
「試行錯誤」は中国古典の故事に由来する語ではなく、もとは心理学の訳語です。
アメリカの心理学者エドワード・L・ソーンダイクは、1898年に発表した動物の学習研究で、問題を解決する行動がさまざまな試みの中から次第に選ばれていく過程を示しました。
「試行」は試しに行うこと、「錯誤」は誤りを意味し、この学習過程を表す語として「試行錯誤」が用いられるようになりました。
日本では遅くとも1939年には心理学の専門用語として使われていました。
同年の『心理學研究』に掲載された松本金寿・倉石精一・續有恒「心理學の術語について」では、外国語の心理学用語に対する訳語として「試行錯誤法」と「試誤法」が並べられています。
現在の四字だけを独立して用いる形とは異なりますが、「試行錯誤」が訳語のまとまりとして定着していたことを示す資料です。
「試行錯誤」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「試行錯誤を重ねる」
長い期間にわたって何度も方法を試したことを述べる形です。「開発で試行錯誤を重ねる」「練習方法について試行錯誤を重ねる」などと使います。 - 「試行錯誤しながら〜」
後ろに作業や行動を続け、その途中で方法を変えたり工夫したりすることを表します。「試行錯誤しながら手順を改める」「試行錯誤しながら進める」などの形です。 - 「試行錯誤の末(に)〜」
長く取り組んだ結果を後ろに続けます。「試行錯誤の末に完成する」「試行錯誤の末、方法を見つける」などと使います。
「試行錯誤」の例文
- 新しい保存技術を確立するため、研究チームは試行錯誤を重ねて温度や時間の条件を絞り込みました。
- 文化祭の展示づくりでは、限られた材料を生かせるよう試行錯誤しながら配置を変えていきました。
- 選手は練習内容を何度も見直し、試行錯誤の末に自分に合う調整方法を見つけました。
「試行錯誤」の類似表現
暗中模索
読み方:あんちゅうもさく
手がかりが乏しく、どう進めればよいか分からない状態で探ることに使います。
実際に方法を試した回数よりも、見通しが立たないことを強く表す言葉です。
悪戦苦闘
読み方:あくせんくとう
困難な状況の中で苦しみながら努力することを表します。
苦労の大きさを強く感じさせる言葉で、複数の方法を次々と試しているとは限りません。
「試行錯誤」の古い用例
中島健蔵『文学の根本問題』(1958~1959年)には、
「試行錯誤をくりかえしている」
という形の用例があります。
少なくとも1950年代後半には、心理学の専門領域を離れた文章でも、「試行錯誤を繰り返す」という現在につながる使い方が見られます。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「試行錯誤」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「試行錯誤」項。
- 松本金寿・倉石精一・續有恒「心理學の術語について」『心理學研究』第14巻第1号、日本心理學會、1939年、53~60頁。
- 小川隆「試行錯誤」『日本大百科全書』小学館。
