読み方:あくせんくとう

「悪戦苦闘」の意味

強敵を相手に苦しい戦いをすること、また、困難な状況の中で苦しみながら懸命に努力することです。

「悪戦苦闘」の語源・由来

「悪戦苦闘」は、近い意味を持つ「悪戦」と「苦闘」を重ねた言葉です。

「悪戦」は不利な状況での苦しい戦い、「苦闘」は苦しみに耐えながら戦うことをいいます。

二つを並べることで、戦いの厳しさを強めています。

「苦闘」は国木田独歩『わかれ』(1898年)、「悪戦」は木下尚江『良人の自白』(1904~1906年)に用例があります。

どちらも現在確認できる「悪戦苦闘」の1918年の用例より前から、独立した言葉として使われていました。

現在の四字の形がいつ作られたのか、誰が作ったのかは明らかではありません。

特定の中国古典の故事をもとにした故事成語ではなく、現在と同じ四字形の原典として挙げられる中国古典も知られていません。

「悪戦苦闘」の使い方

次のような型がよく使われます。

  • 「〜に悪戦苦闘する」
    前には、解決や克服が難しい問題・作業などを置きます。「難題に悪戦苦闘する」「慣れない機械操作に悪戦苦闘する」などの形です。
  • 「悪戦苦闘の末、〜」
    苦労を重ねたあとの結果を続けます。「悪戦苦闘の末、解決する」「悪戦苦闘の末、完成する」などと使います。
  • 「悪戦苦闘の連続」
    苦労の多い期間や取り組みについて使います。「開発期間は悪戦苦闘の連続」「創業当初は悪戦苦闘の連続」などの形です。

「悪戦苦闘」の例文

  • 新しい予約システムの導入では予想外の不具合が続き、担当者たちは悪戦苦闘した。
  • 初めて一人で家具を組み立てた彼は、悪戦苦闘の末、夕方になってようやく作業を終えた。
  • 格上の相手との試合で、選手たちは最後まで悪戦苦闘を続けたが、あと一歩及ばなかった。

「悪戦苦闘」の類似表現

四苦八苦(しくはっく)

非常に苦労したり、思うようにいかず困ったりする場合に使います。

「四苦八苦」は困り果てている様子にも使えるのに対し、「悪戦苦闘」は困難に立ち向かって取り組んでいる場面に向いています。

孤軍奮闘(こぐんふんとう)

周囲から十分な助けを得られない中で、一人または少人数で懸命に頑張る場合に使います。

「孤軍奮闘」では味方が少ないことが重要ですが、「悪戦苦闘」にはそのような人数の条件はありません。

「悪戦苦闘」の古い用例

芥川龍之介『開化の殺人』は、『中央公論』1918(大正7)年7月に発表されました。

作中には

「幾多の悪戦苦闘の後」

とあり、恋愛感情をめぐる心の苦しみについて使われています。

1918年には、戦争や勝負に限らず、精神的な苦しみを伴う努力にも「悪戦苦闘」が使われていました。

谷崎潤一郎『小さな王国』は、『中外』1918(大正7)年8月号に発表された作品です。

子供たちの戦争ごっこの場面で、人数の少ない沼倉組について

「盛んに悪戦苦闘して」

と使われています。

こちらは勝負の中で苦しく戦うという、本来の戦いに近い用例です。

参考文献・出典

  • 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
  • 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「悪戦苦闘」項。
  • 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「悪戦苦闘」「悪戦」「苦闘」項。
  • 芥川龍之介『開化の殺人』、初出『中央公論』1918年7月。青空文庫収録本文・作品データ。
  • 谷崎潤一郎『小さな王国』、初出『中外』1918年8月号。青空文庫収録本文・作品データ。
ABOUT ME
北澤篤史
四字熟語・漢字熟語・ことわざ・慣用句・故事成語を対象に、語源・由来、古い用例、文献上の変遷を研究している。ことわざ学会理事。2025年度ことわざ研究奨励賞受賞。著書に『〈試験に出る〉マンガでわかる おもしろい四字熟語図鑑』『〈試験に出る〉マンガでわかる すごいことわざ図鑑』『マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑』(いずれも講談社)がある。