読み方:やろうじだい

「夜郎自大」の意味

自分の力量をよく分かっていないのに、自分を高く評価して威張ることです。

特に、広い世界を知らないために自分を実際以上に大きく考えている、という世間知らずの含みがあります。

「夜郎自大」の語源・由来

もとになったのは、司馬遷の『史記』巻一一六「西南夷列伝」に記された話です。

漢の武帝の時代、漢から西南地方へ使者が送られました。

滇(てん)の王は漢の使者に、

「漢孰與我大?」

と尋ねました。

「漢と自分の国とでは、どちらが大きいのか」という意味です。

続いて「及夜郎侯亦然」とあり、夜郎の君主も同じように尋ねたことが記されています。

彼らは交通が隔てられていたため、漢がどれほど大きな国かを知りませんでした。

ただし、『史記』のこの箇所に「夜郎自大」という四字の語形そのものはありません。

「夜郎」と尊大さを結びつける表現は明代後期に広まり、現在と同じ「夜郎自大」の四字形は、安世鳳『墨林快事』巻七の天啓四年(1624)の記述に見られます。

さらに『天啓実録』の1627年の記事などにも用例があり、故事が記された時代よりはるか後に四字熟語として定着したことが分かります。

「夜郎自大」の使い方

次のような型がよく使われます。

  • 「夜郎自大な〜」
    後ろに「態度」「発言」「考え」「人物」などを続けます。「夜郎自大な態度」「夜郎自大な考え」などの形です。
  • 「夜郎自大になる」
    自信を持ちすぎて、自分の力を実際以上に考えるようになったことを述べるときに使います。「成功を重ねて夜郎自大になる」などと続けます。
  • 「夜郎自大に陥る」
    人だけでなく、組織や集団についても使えます。「内輪の評価だけで夜郎自大に陥る」などの形です。
  • 「夜郎自大の〜」
    「心」「風」「傾向」などにつなげる、やや文章語的な形です。「夜郎自大の心」のように使います。

「夜郎自大」の例文

  • 地区大会で好成績を収めただけで全国でも敵はいないと思い込むのは、夜郎自大な考えです。
  • 国内での成功だけを根拠に海外の競争相手を軽く見ていた企業は、自分たちが夜郎自大だったことを思い知らされました。
  • 強豪選手との試合を経験したことで、彼はいつの間にか夜郎自大に陥っていたと気づきました。

「夜郎自大」の類似表現

妄自尊大

読み方:もうじそんだい

自分をむやみに偉いものと思って尊大に振る舞うことです。

「夜郎自大」では見聞の狭さや世間を知らないことが背景にありますが、「妄自尊大」はその理由を問わず、根拠なく自分を高く評価する態度について使えます。

井底之蛙

読み方:せいていのあ

狭い範囲しか知らず、広い世界を知らない人をたとえた言葉です。

「井底之蛙」は見識の狭さを指すのが中心で、必ずしも威張った態度まで含みません。

「夜郎自大」の古い用例

久米邦武の『特命全権大使米欧回覧実記』第四編には、

「頗る夜郎自大の心あり」

という用例があります。

「夜郎自大の心」という形で、人の尊大な考え方を評するために使われています。

『米欧回覧実記』の初版は明治11年(1878)10月刊で、明治初期にはすでに日本語の文章で「夜郎自大」が使われていたことが分かります。

「夜郎自大」の間違いやすい使い方・表記

「やろう」という読みから「野郎自大」と書くのは誤りです。

「夜郎」は「夜郎自大」のもとになった国名なので、「夜」の字を使って「夜郎自大」と書きます。

参考文献・出典

  • 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
  • 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「夜郎自大」項。
  • 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「夜郎自大」項。
  • 司馬遷『史記』巻一一六「西南夷列伝」。
  • 闫平凡「“夜郎自大”成语的形成」『光明日报』2017年7月3日、13版。
  • 国立国会図書館『特命全権大使米欧回覧実記』書誌情報。
ABOUT ME
北澤篤史
四字熟語・漢字熟語・ことわざ・慣用句・故事成語を対象に、語源・由来、古い用例、文献上の変遷を研究している。ことわざ学会理事。2025年度ことわざ研究奨励賞受賞。著書に『〈試験に出る〉マンガでわかる おもしろい四字熟語図鑑』『〈試験に出る〉マンガでわかる すごいことわざ図鑑』『マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑』(いずれも講談社)がある。