猪突猛進
読み方:ちょとつもうしん
「猪突猛進」の意味
一つのことに向かって、周囲の状況や先のことを十分に考えず、猛烈な勢いで突き進むことです。
行動力の強さを表すこともありますが、向こう見ずで無鉄砲だという批判的な含みを伴うことがあります。
「猪突猛進」の語源・由来
「猪突猛進」は、「猪突」と「猛進」を組み合わせた言葉です。
現在の「猪突猛進」という四字の形が中国古典にそのまま見られるわけではありません。
「猪突」の古い背景は、中国の歴史書『漢書』に見られます。
王莽が男子や死刑囚、奴隷などを募って兵とし、「豬突豨勇(ちょとつきゆう)」と名づけたことが、『漢書』「食貨志」や「王莽伝」に記されています。
原文には、
莽大募天下囚徒人奴、名曰豬突豨勇
などとあります。
「豬突」は、猪が人に向かって突きかかるような勢いを表す語として用いられました。
「猛進」については、仏典『無量寿経』にある「勇猛精進」という語との関係が指摘されています。
同経には「勇猛精進、志願無倦」とあり、勇ましく励み続け、志や願いに倦むことがない姿を述べています。
現在の四字形がいつ成立したのかは明確ではありません。
「豬突豨勇」や「勇猛精進」が、そのまま「猪突猛進」という形で古典に現れるわけではないため、原典の語句と現在の四字熟語は区別する必要があります。
「猪突猛進」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「猪突猛進する」
後ろに「する」を付けて、勢いよく突き進む行動を表します。「目標に向かって猪突猛進する」などの形です。 - 「猪突猛進の〜」
後ろに人物や行動を表す言葉を続けます。「猪突猛進の気概」「猪突猛進の勢い」などと使います。 - 「猪突猛進で〜」
行動のしかたや人物の傾向を述べるときに使います。「猪突猛進で計画を進める」などの形です。
「猪突猛進」の例文
- 彼は新しい事業を始めると決めると、周囲の忠告にも耳を貸さず猪突猛進した。
- 勢いだけで猪突猛進するのではなく、途中で計画を見直すことも必要だ。
- 彼女の猪突猛進の行動力は頼もしいが、ときどき仲間を置き去りにしてしまう。
「猪突猛進」の類似表現
勇往邁進(ゆうおうまいしん)
恐れることなく、自分の目標に向かって力強く進むことです。
「猪突猛進」にある向こう見ずさや周囲への配慮不足という含みは弱く、目標へ進む積極的な姿勢を述べる場合に向いています。
一心不乱(いっしんふらん)
一つのことに心を集中し、ほかのことに気を取られないことです。
「猪突猛進」が勢いのある行動を表すのに対し、「一心不乱」は勉強や作業などに集中している状態にも広く使えます。
「猪突猛進」の古い用例
昭和10年(1935年)1月8日の『神戸又新日報』には、
「猪突猛進の紡機の海外進出」
という見出しの記事があります。
機械そのものが突進するという意味ではなく、紡績機の海外進出が勢いよく進む様子を「猪突猛進」と表したものです。
少なくとも昭和10年には、人物以外の勢いにも用いられていたことが分かります。
井上靖の『暗い平原』(1952年)には、
「それが実現のために、猪突猛進する」
という用例があります。
「猪突猛進する」と「する」を伴わせる形が、この時期には文学作品でも使われています。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「猪突猛進」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「猪突猛進」項。
- 班固撰『漢書』巻二十四下「食貨志第四下」・巻九十九下「王莽伝第六十九下」。
- 『仏説無量寿経』巻上。
- 国立国会図書館レファレンス協同データベース「『猪突猛進』という言葉の由来が知りたい。」。
- 『神戸又新日報』1935年1月8日「猪突猛進の紡機の海外進出―英、米、伊から引合続出」、神戸大学経済経営研究所新聞記事文庫。
