指をくわえる
読み方:ゆびをくわえる
「指をくわえる」の意味
うらやましい、欲しいと思いながらも手を出せず、ただ見ていることをいいます。
自分には手に入れられないものや、参加・関与できないことを前にした羨望やもどかしさを含む表現です。
文脈によっては、羨望よりも「何もできず傍観している」という面が強く出ることもあります。
「指をくわえる」の語源・由来
現在の一般的な意味については、人がおいしそうな物を食べているのを、そばで指をくわえながら欲しそうに眺めている姿にたとえたものとされています。
欲しいという気持ちはあっても自分では手に入れられない、その様子が「うらやましく思いながら手を出せない」という意味につながりました。
「指をくわえる」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「〜を指をくわえて見る/眺める」
「〜を」には、欲しいものや、うらやましく感じる人の成功・行動などが入ります。「他人の成功を指をくわえて見る」「売れていく商品を指をくわえて眺める」などの形です。 - 「指をくわえて〜しかない」
自分には手を出す方法がなく、見ているほかないことを表す形です。「指をくわえて見ているしかない」「指をくわえて眺めるしかない」などと使います。 - 「指をくわえている/指をくわえてはいられない」
「いる」の形では、何もしない状態が続いていることを示せます。否定の「はいられない」を付けると、傍観せず行動しなければならないという文脈になります。「いつまでも指をくわえている」「指をくわえてはいられない」などの形です。
「指をくわえる」の例文
- 新企画を他社に先取りされた以上、もう指をくわえて見ているわけにはいきません。
- 抽選に外れた私は、当選者が限定グッズを受け取る姿を指をくわえて眺めるしかありませんでした。
- 欲しかった機材が特価になったものの予算が足りず、結局は指をくわえているだけでした。
「指をくわえる」の類似表現
手をこまねく(てをこまねく)
「手をこまねく」は、何もせずに傍観していることを表す言葉です。
「指をくわえる」には、欲しい、うらやましいという気持ちを伴うことがありますが、「手をこまねく」は行動を起こさず見ていること自体に重点があります。
そのため、災害や問題への対応など、羨望とは関係のない場面では「手をこまねく」のほうが適しています。
「指をくわえる」の古い用例
「指をくわえる」には、現在の一般的な意味とは異なる古い意味がありました。
1603~1604年の『日葡辞書』には、「恥ずかしそうにする」「きまり悪そうにする」という意味の表現として記録されています。
1718年の浄瑠璃『山崎与次兵衛寿の門松』にも「ゆびをくはへて這出る」という記述があり、この古い意味で用いられています。
三遊亭円朝の『真景累ケ淵』には、1869年ごろの用例として「指をくはへて引込む事は出来ぬ」とあります。
こちらは、何もせず引き下がることはできないという文脈で、現在の「手を出せず傍観する」に近い意味がすでに見受けられます。
古くは「恥ずかしそうにする」という意味があり、のちには現在につながる言い方も使われるようになったことが分かります。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「指をくわえる」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「指をくわえる」項。
- 集英社辞典編集部編『ルーツでなるほど慣用句辞典』集英社、1991年、「指をくわえる」項。
