役者が一枚上
読み方:やくしゃがいちまいうえ
「役者が一枚上」の意味
人物としての力量や知恵、駆け引きなどで、相手より一段すぐれていることです。
特に、人とのやり取りや勝負事で相手の巧みさを認めるときに使われます。
「役者が一枚上」の語源・由来
芝居の番付や看板で、上位の役者から順に名前を記したことに由来します。
役者の格の違いが、名前を置く位置の上下に表れていたことから、人物や知略などが相手よりすぐれていることを「役者が一枚上」と表すようになりました。
歌舞伎では、役者の演技や人気を評価して「位付け」をする文化もありました。
江戸時代から明治時代にかけて出版された役者評判記では、役柄ごとに役者を分け、技芸などに応じて位を付けています。
役者の間に明確な格付けがあったことが、この表現の背景にあります。
「役者が一枚上」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「〜のほうが役者が一枚上だ」
二人や二つの側を比べ、一方がすぐれていることを述べる基本的な形です。「彼のほうが役者が一枚上だ」「相手のほうが役者が一枚上だ」などと使います。 - 「〜では役者が一枚上だ」
何について優劣を比べているのかを「では」で示します。「交渉では役者が一枚上だ」「駆け引きでは役者が一枚上だ」などの形です。 - 「役者が一枚上だった」
勝負や交渉などが終わったあと、その結果を振り返って使う形です。「今回は相手が役者が一枚上だった」「結局、彼のほうが役者が一枚上だった」などといいます。 - 「役者が一枚上だと〜」
後ろに「認める」「感じる」「思う」などを続け、相手の力量を評価する形です。「役者が一枚上だと認める」「役者が一枚上だと感じた」などと使います。
「役者が一枚上」の例文
- 条件を最後まで巧みに伏せていた先方のほうが、今回の交渉では役者が一枚上だった。
- 相手チームはどんな質問にもすぐ切り返し、こちらも役者が一枚上だと認めざるを得なかった。
- 心理戦になるとベテラン選手のほうが役者が一枚上で、若手はなかなか自分のペースに持ち込めなかった。
「役者が一枚上」の類似表現
役者が違う(やくしゃがちがう)
「役者が一枚上」と同じ意味で使われる表現です。
国語辞典でも同義の言葉として扱われており、人物や知略、駆け引きなどの力量に差がある場面では、多くの場合に言い換えられます。
一枚上手(いちまいうわて)
技能や知識、駆け引きなどが相手より一段すぐれていることを表し、「彼のほうが一枚上手だ」のように使います。
「役者が一枚上」と意味の重なる範囲が広い表現ですが、役者や芝居を背景にしたたとえを含まないため、能力の比較にも広く使えます。
「役者が一枚上」の古い用例
『精選版 日本国語大辞典』では、「役者が一枚上」と同義の「役者が上」が初めて世に出た例として、三代目柳家小さんの落語『二人癖』(1896年)が挙げられています。
そこでは、相手方について「役者が上だ」と評する形で使われています。
明治29年には、現在の「役者が一枚上」につながる比喩的な意味で、短い言い回しの「役者が上」が用いられていたことが分かります。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「役者が一枚上」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「役者」項、「一枚」項。
- 独立行政法人日本芸術文化振興会「文化デジタルライブラリー 歌舞伎事典『役者評判記』」。
