焼き餅を焼く
読み方:やきもちをやく
「焼き餅を焼く」の意味
人の愛情や関心などをめぐって、嫉妬することです。
恋愛関係だけでなく、家族や友人など身近な人間関係でも使われます。
「焼き餅を焼く」の語源・由来
「焼き餅」の「焼き」は、嫉妬するという意味の「妬く(やく)」に掛けたものです。
「妬く」を同じ音の「焼く」に置き換え、そこに「餅」を添えて「焼き餅」という言葉が作られました。
「焼いた餅がふくらむ様子と、嫉妬してふくれる様子が似ているから」という説明もありますが、辞書では「嫉妬する意の『焼く』に餅を添えた語」とされています。
「焼き餅を焼く」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「〜に焼き餅を焼く」
「〜」には、嫉妬の対象となる人などが入ります。「恋人の友人に焼き餅を焼く」「弟に焼き餅を焼く」などの形です。 - 「〜が焼き餅を焼く」
焼き餅を焼く人や動物を主語にする形です。「彼が焼き餅を焼く」「飼い犬が焼き餅を焼いた」などと使います。 - 「焼き餅を焼いて〜」
嫉妬したことをきっかけとする行動や態度を後ろに続けます。「焼き餅を焼いて黙り込む」「焼き餅を焼いて機嫌を損ねる」などの形です。 - 「〜に焼き餅を焼かれる」
受け身にして、誰から嫉妬されたのかを表します。「恋人に焼き餅を焼かれる」「姉に焼き餅を焼かれた」などと使います。
「焼き餅を焼く」の例文
- 彼女が同僚と楽しそうに話しているのを見て、彼は少し焼き餅を焼いた。
- 母が生まれたばかりの妹ばかり抱いているので、幼い兄が焼き餅を焼いてすねてしまった。
- 友人と出かけただけなのに恋人から焼き餅を焼かれ、何度も事情を説明することになった。
「焼き餅を焼く」の類似表現
妬く(やく)
「焼き餅を焼く」より短く、「彼が妬いている」「そんなに妬くな」のように動詞として使えます。
恋愛など身近な人間関係では、使われ方がよく重なります。
嫉妬する(しっとする)
「焼き餅を焼く」より広い場面で使える表現です。
恋愛や人間関係だけでなく、他人の才能、成功、地位などをうらやむ場合にも自然に使えます。
「焼き餅を焼く」はくだけた表現で、身近な人への嫉妬を表すときに使いやすい言い方です。
「焼き餅を焼く」の古い用例
伊藤左千夫の小説『野菊の墓』(1906年)には、「それはお増どんが焼餅をやくのでさ。つまらんことにもすぐ焼餅を焼く」という記述があります。
明治時代には、「焼餅をやく」「焼餅を焼く」という形で、嫉妬する意味に使われていました。
なお、嫉妬を意味する名詞「焼餅」はさらに古く、1760年の川柳評万句合に「焼きもち」の記述が残っています。
慣用句のもとになる「焼き餅」が、少なくとも江戸時代中期には嫉妬の意味で用いられていたことが分かります。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「焼き餅を焼く」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「焼餠」項。
- 伊藤左千夫『野菊の墓』1906年。
