そうは問屋が卸さない
読み方:そうはとんやがおろさない
「そうは問屋が卸さない」の意味
物事が自分の思いどおりに、そう簡単には進まないという意味です。
相手の要求や思惑に対して、「そのとおりにはさせない」という気持ちを込めて使うこともあります。
「そうは問屋が卸さない」の語源・由来
「問屋」は、仕入れた商品を小売店などに卸す商人や業者です。
「卸す」は、商品を小売店などへ卸売りすることをいいます。
「そんなに安い値段では問屋が品物を卸してくれない」という商取引になぞらえた表現で、そこから、こちらの都合や注文どおりには物事が運ばないことをいうようになりました。
「そうはいかない」と直接言う代わりに、問屋を持ち出して軽くひねった言い方でもあります。
これと似た調子の言い回しには、「そうは虎の皮のふんどし」などもありました。
「そうは問屋が卸さない」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「〜と思っても、そうは問屋が卸さない」
自分や相手の見込みどおりには進まないことを述べる形です。「簡単に勝てると思っても、そうは問屋が卸さない」「すぐに許されると思っても、そうは問屋が卸さない」などと使います。 - 「〜だろうが、そうは問屋が卸さない」
相手の期待や考えを示したあと、それを打ち消す形です。「逃げ切れるつもりだろうが、そうは問屋が卸さない」「楽に稼げるつもりだろうが、そうは問屋が卸さない」などの形があります。 - 「そうは問屋が卸さないと〜」
慣用句全体を引用する形で、後ろに人の態度や行動を続けます。「そうは問屋が卸さないと断る」「そうは問屋が卸さないと条件を付ける」などと使えます。
「そうは問屋が卸さない」の例文
- 相手チームは主力選手を欠いているので楽に勝てると思ったが、そうは問屋が卸さなかった。
- 値下げを迫れば先方もすぐ折れるだろうと考えていたら、そうは問屋が卸さないとばかりに厳しい条件を提示された。
- 一度謝れば問題は収まると思っているのかもしれないが、これだけ多くの人に迷惑を掛けた以上、そうは問屋が卸さない。
「そうは問屋が卸さない」の類似表現
一筋縄ではいかない(ひとすじなわではいかない)
普通の方法では簡単に扱ったり解決したりできない人や物事について使います。
「一筋縄ではいかない相手」「一筋縄ではいかない問題」のように、対象そのものの手ごわさを述べる形が中心です。
そうはいかない(そうはいかない)
「そうは問屋が卸さない」より簡潔で、幅広い場面で使えます。
「そうは問屋が卸さない」には軽口やしゃれを交えた響きがあり、相手の思惑を退ける場面ではやや強い調子になることがあります。
「そうは問屋が卸さない」の古い用例
田山花袋の『春潮』(1903年)には、「さう安くは問屋では卸さん」という形が使われています。
「そうは問屋が卸さない」と完全に同じ言い回しではなく、「安くは」「問屋では」「卸さん」という形ですが、現在の慣用句につながる言い回しとして記録されています。
夏目漱石の『坑夫』(1908年)には、「そうは問屋で卸さない」とあります。
この作品では、現在では一般的な「問屋が」ではなく「問屋で」となっており、明治時代末期には現在に近い形で使われていたことが分かります。
「そうは問屋が卸さない」の間違いやすい使い方・表記
「そうは問屋が許さない」とするのは、本来の慣用句とは異なります。
「問屋が商品を卸す」という商取引に基づく表現なので、「卸さない」が正しい形です。
「許さない」は、「思いどおりにはさせない」という意味から連想して生じやすい言い間違いです。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「そうは問屋が卸さない」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「然は問屋が卸さない」項。
- 北村孝一編『小学館 ことわざを知る辞典』小学館、2018年、「そうは問屋が卸さない」項。
- 夏目漱石『坑夫』、1908年。
- 国立国会図書館「レファレンス協同データベース」埼玉県立久喜図書館「『そうは問屋がおろさない』の語源、および時代背景が知りたい。」
