青天の霹靂
読み方:せいてんのへきれき
「青天の霹靂」の意味
まったく予想していなかった出来事が突然起こること、または突然大きな衝撃を受けることです。
日常のちょっとした意外さよりも、本人や周囲を驚かせるような変化や知らせについて使われることが多い表現です。
「青天の霹靂」の語源・由来
中国・南宋の詩人、陸游(りくゆう)の詩に由来します。
『剣南詩稿』巻八十四の「四日夜鶏未鳴起作」には、「正如久蟄龍、青天飛霹靂」とあり、長く潜んでいた竜が、青空に雷を飛ばすようだと詠んだものです。
この詩では、病気で過ごしていた陸游が急に起きて筆を振るう勢いを、竜と雷になぞらえています。
もともとは突然の事件を指した表現ではなく、激しい筆勢を描いた言葉でした。
そこから、晴れ渡った空に突然雷が起こるというイメージと結びつき、思いがけない変動や衝撃を指す表現として使われるようになりました。
「青天の霹靂」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「〜にとって青天の霹靂だ/だった」
「〜」には、突然の出来事によって驚いた人や集団が入ります。「社員にとって青天の霹靂だった」「家族にとって青天の霹靂だ」などの形です。 - 「〜は青天の霹靂だ/だった」
予想していなかった知らせや出来事を主語に置く形です。「突然の辞任は青天の霹靂だった」「閉店の知らせは青天の霹靂だ」などと使います。 - 「青天の霹靂ともいうべき〜」
後ろに「出来事」「知らせ」「発表」などの名詞を続けます。「青天の霹靂ともいうべき発表」「青天の霹靂ともいうべき知らせ」などの形です。 - 「青天の霹靂と受け止める/感じる」
出来事を受けた側の驚きを述べる形です。「発表を青天の霹靂と受け止める」「知らせを青天の霹靂と感じた」などと使います。
「青天の霹靂」の例文
- 来年度で工場を閉鎖するという発表は、そこで長年働いてきた従業員にとって青天の霹靂だった。
- 優勝候補だったチームの監督が開幕直前に辞任したことは、ファンには青天の霹靂ともいうべき出来事だった。
- 何の前触れもなく海外赴任を命じられ、彼はその知らせを青天の霹靂と受け止めた。
「青天の霹靂」の類似表現
寝耳に水(ねみみにみず)
突然知らされたことに驚く場合によく使います。
「青天の霹靂」より日常的な言い方で、必ずしも社会的な大事件や大きな変動でなくても使えます。
藪から棒(やぶからぼう)
前触れなく突然ものを言ったり、行動を起こしたりする様子に使います。
「藪から棒に質問する」「藪から棒な話」のように、人の発言や行動の唐突さを表す場合に向いています。
「青天の霹靂」の古い用例
内田魯庵の「明治の文学の開拓者」は、1912年(明治45年)1月の『新潮』に発表された文章です。
坪内逍遥が文学士でありながら小説を書いて世間を驚かせたことについて、「実に青天の霹靂といおう乎」と記しています。
この記述では、自然現象としての雷ではなく、人々の予想を大きく裏切る出来事の比喩として使われています。
20世紀初めには、現在とほぼ同じ意味の「青天の霹靂」が日本語で用いられていました。
「青天の霹靂」の間違いやすい使い方・表記
標準的な表記は「青天の霹靂」で、由来となった陸游の詩にも「青天飛霹靂」とあり、「青天」が使われています。
ただし、「晴天の霹靂」という形にも古い用例があります。
二葉亭四迷の『浮雲』(1887~1889年)には「晴天の霹靂」という表記が実際に使われています。
「晴天」を誤りとする現代の扱いもあるため、一般的な文章では、由来に沿った「青天の霹靂」と書くのが適切です。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「青天の霹靂」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「青天の霹靂」「晴天の霹靂」項。
- 陸游『剣南詩稿』巻八十四「四日夜鶏未鳴起作」。
- 内田魯庵「明治の文学の開拓者」『新潮』1912年1月。
- 二葉亭四迷『浮雲』1887~1889年。
