王手を掛ける
読み方:おうてをかける
「王手を掛ける」の意味
成功や勝利まであと一歩のところに迫ることを意味する慣用句です。
相手を決定的に追い詰める手段を取るという意味でも使われます。
「王手を掛ける」の語源・由来
「王手」は、もともと将棋の専門用語です。
相手の王将・玉将を自分の駒で直接攻撃し、次の一手で取れる状態にすることを「王手を掛ける」といいます。
王手を掛けられた側は、その王手を解消する手を指さなければなりません。
ここから、相手を追い詰めることや、勝利・成功が目前に迫った状態についても「王手を掛ける」と言うようになりました。
現在では、将棋以外の勝負や目標達成について広く使われています。
「王手を掛ける」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「〜に王手を掛ける」
「〜に」には、優勝、連覇、記録達成など、目前に迫った目標が入ります。「優勝に王手を掛ける」「通算100勝に王手を掛ける」などの形です。 - 「〜へ王手を掛ける」
目指している段階や到達点を「〜へ」で示す形です。「決勝進出へ王手を掛ける」「悲願の昇格へ王手を掛ける」などと使います。 - 「王手を掛けられる」
相手の側が勝利や目標達成まであと一歩に迫った場合の受け身の形です。「先に王手を掛けられる」「相手に王手を掛けられた」などと使います。「王手を掛けられる」という形は、将棋本来の用法でも古くから見られます。
「王手を掛ける」の例文
- エースの好投で決勝第2戦も制し、チームは初優勝に王手を掛けた。
- 今回の勝利で通算99勝となり、節目の100勝へ王手を掛けている。
- 先に王手を掛けられたものの、そこから二連勝して逆転でシリーズを制した。
「王手を掛ける」の類似表現
大詰めを迎える(おおづめをむかえる)
物事が最後の段階に入ることを表します。
交渉、工事、計画、物語など、勝敗のないものにも広く使えます。
「王手を掛ける」は、勝利や目標達成が目前に迫った側について使うことが多く、「大詰めを迎える」よりも勝負や達成のニュアンスが強い表現です。
あと一歩(あといっぽ)
目標や成功に非常に近い状態を表す点ではよく似ています。
「完成まであと一歩」「あと一歩及ばなかった」のように、達成できなかった場合にも使えます。
「王手を掛ける」は、勝利や記録などを目前にした場面で使いやすく、将棋に由来する勝負の語感があります。
「王手を掛ける」の古い用例
「王手」という将棋用語は古く、1603~1604年に刊行された『日葡辞書』にも収録されています。
少なくとも近世初頭には、将棋の言葉として使われていました。
1909年刊の『将棋定跡講義』には、「王手を掛けられる手順はないから」という言い回しが使われています。
現在と同じ「王手を掛ける」という組み合わせが、受け身の「王手を掛けられる」として確認できる例です。
この時の言い回しでは、まだ将棋そのものについて使われています。
「王手を掛ける」の間違いやすい使い方
将棋本来の「王手」は、「あと一手で必ず勝てる」という意味ではありません。
王手とは、相手の玉が次に取られる状態であり、掛けられた側は玉を逃がす、攻めている駒を取るなどして王手を解消できます。
王手をどうしても解消できなくなった状態が「詰み」です。
日常語の「王手を掛ける」は、そこから意味が広がり、「あと一歩で勝利・達成」という意味で使われています。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「王手を掛ける」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「王手」項。
- 日本将棋連盟「将棋のルールに関するご質問」。
- 日国友の会「おうて【王手】」。
