曲がりなりにも
読み方:まがりなりにも
「曲がりなりにも」の意味
十分とはいえないものの、どうにか成り立っていることを意味します。
仕事や役割を一応果たしていることや、完全ではなくても何かを完成させたことなどについて使われます。
自分について使うと、実力や成果を控えめに述べる響きを持つことがあります。
「曲がりなりにも」の語源・由来
「曲がりなり」は、漢字では「曲形」と書かれます。
「なり」は「形・姿」を意味する言葉で、「曲形」はもともと曲がった形を指し、そこから不完全なこと、不出来なことも表すようになりました。
この「曲がりなり」に「にも」が付いた「曲がりなりにも」が、不十分な状態であっても一応は成り立っていることを示す言葉として定着しました。
「曲形にも」という言い方は、江戸時代の文献にも見られます。
「曲がりなりにも」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「曲がりなりにも〜だ/〜である」
職業や立場、身分などを表す名詞につなげます。「曲がりなりにもプロだ」「曲がりなりにも責任者である」などの形です。 - 「曲がりなりにも〜をする/した」
完璧ではなくても、仕事や役割などを行ったことについて使います。「曲がりなりにも役目を果たした」「曲がりなりにも店を経営している」などと使います。 - 「曲がりなりにも〜できる/できた」
不十分な点を残しながらも、ある結果までたどり着いたことを表す形です。「曲がりなりにも完成できた」「曲がりなりにも生活できている」などと続けます。
「曲がりなりにも」の例文
- 初めて企画を担当したので反省点は多いが、曲がりなりにも最後までやり遂げることができた。
- 私は曲がりなりにもこの店の責任者ですから、問題が起きた以上は最後まで対応します。
- 長い間動かなかった時計を修理したところ、曲がりなりにも時を刻むようになった。
「曲がりなりにも」の類似表現
どうにかこうにか
困難や苦労がありながら、何とか目的を達成したことを表すときによく使います。
「どうにかこうにか試験に合格した」のように、そこまでたどり着く苦労を感じさせやすい表現です。
「曲がりなりにも」は、達成までの苦労だけでなく、出来栄えや能力などが十分ではないことを含めて述べる場合にも使えます。
一応(いちおう)
「一応」は、最低限必要なところまでは達していることを広く表せます。
「一応完成した」「一応責任者だ」など、比較的中立的な言い方です。
「曲がりなりにも」には、その状態や出来栄えが十分ではないという評価がよりはっきり含まれます。
「曲がりなりにも」の古い用例
樋口一葉の『大つごもり』(1894年)には、「曲りなりにも親子三人の口をぬらして」という記述があります。
「口をぬらす」は、ここでは細々と暮らしを立てるという意味です。
十分な暮らしとはいえなくても、親子三人が生活していることを「曲りなりにも」で表しており、明治時代には現在につながる使われ方がされていました。
「曲がりなりにも」の間違いやすい使い方・表記
「まがいなりにも」とするのは、「曲がりなりにも」と音が似ていることから生じた誤りです。
「まがい」は「紛い物」などに使う別の言葉で、「曲がりなりにも」の「曲がり」とは意味が異なります。
漢字を用いて「曲がり形にも」「曲り形にも」と書くこともできますが、「なり」をひらがなにした「曲がりなりにも」という表記が分かりやすいでしょう。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「曲がりなりにも」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「曲形」「曲形にも」項。
- 樋口一葉『大つごもり』1894年。
