功を奏する
読み方:こうをそうする
「功を奏する」の意味
努力や工夫、対策などが効果を現し、目的にかなった成果につながることを意味し、「成功する」「効果を現す」という意味を持つ慣用句です。
多くの場合、努力・作戦・説得・改善策など、結果を生み出す原因となったものを主語にします。
結果そのものが社会的に好ましいかどうかではなく、その行動や方法が狙いどおりに働いたかどうかを表せる言葉です。
「功を奏する」の語源・由来
「奏する」には古くから、天皇などに申し上げる、奏上するという意味があり、「功を奏す」も、もとは「功績を天子に申し上げる」という意味を持っていました。
ここでの「奏」は、「音楽を奏する」の意味から生まれたものではありません。
近代になると、「奏する」が「なしとげる」「成果をもたらす」という意味でも用いられるようになり、「功を奏す」は事が成就することや成功することを表すようになりました。
近代漢語の研究でも、「奏」という言葉の意味が「なしとげる」方向へ広がったことが指摘されています。
「功を奏する」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「〜が功を奏する/功を奏した」
「〜」には、努力、工夫、対策、作戦、説得、練習など、成果につながった行動や方法が入ります。「地道な練習が功を奏した」「早めの対策が功を奏する」などの形です。 - 「〜が功を奏して、…」
効果が現れたことを原因として、その後に具体的な結果を続ける形です。「宣伝が功を奏して、客が増えた」「声かけが功を奏して、不安が和らいだ」などと使います。 - 「〜に功を奏する」
効果が現れる対象や目的を助詞「に」で示すことがあります。「売り上げの回復に功を奏する」「混雑の緩和に功を奏した」などの形です。 - 「〜も功を奏さない/功を奏さなかった」
否定形では、試みた方法が期待した効果を生まなかったことを示します。「再三の説得も功を奏さなかった」「新しい対策も功を奏さない」などと使います。
「功を奏する」の例文
- 夏前から続けた走り込みが功を奏し、彼は決勝でも最後までペースを落とさず優勝しました。
- 商品名を短く覚えやすいものに変えたことが功を奏して、若い世代からの注文が大きく増えました。
- 先生や友人が何度も説得しましたが、その働きかけは功を奏さず、彼の決意を変えることはできませんでした。
「功を奏する」の類似表現
実を結ぶ(みをむすぶ)
努力や苦労を重ねた結果、成果が得られることを表します。
「長年の研究が実を結ぶ」「努力が実を結ぶ」のように、ある程度の時間をかけた積み重ねについて使いやすい表現です。
「功を奏する」は長期的な努力だけでなく、一つの対策、作戦、説得、工夫などが狙った効果を生んだ場合にも自然に使えます。
奏功する(そうこうする)
意味は「功を奏する」とほぼ同じで、多くの場面で言い換えられます。
「対策が奏功した」「交渉が奏功する」のように使い、「功を奏する」より短く、やや改まった印象を与える表現です。
「功を奏する」の古い用例
『漢語字類』(1869年)では、「功を奏す」に当たる「奏功」が、功績を天子に申し上げる意味で説明されています。
この段階では、現在の「効果を現す」意味とは異なる、奏上の意味が明確に残っています。
中村正直訳『西国立志編』(1870~71年)には「成就の功を奏すべきなり」という記述があります。
『精選版 日本国語大辞典』では、事が成就する、成功するという意味の初めて世に出た実例として挙げられており、明治時代初期には現在につながる意味がすでに現れていました。
森鴎外『雁』(1911~13年)には「弁解が功を奏したと思って」という形が見られます。
20世紀初頭には、「弁解が」のように原因となる行為を主語に置く、現在とほぼ同じ言い回しで使われています。
「功を奏する」の間違いやすい使い方・表記
一般的な表記は「功を奏する」で、「効を奏する」という表記も実際には古くから記述はありますが、辞書によって扱いが異なります。
『大辞泉』では「効を奏する」を誤りとしていますが、『精選版 日本国語大辞典』は「効を奏す」を見出しとして収録し、1909年の記述も挙げています。
歴史的には「効」の表記も存在するものの、現代の一般的な文章では「功を奏する」と書くのが適切です。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「功を奏する」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「功を奏す」「奏する」「効を奏す」項。
- 小学館『デジタル大辞泉』「功を奏する」項。
- 安部清哉編著『日本語における漢語語基史と新漢語史のための基礎的調査研究――漢字・漢語の「気づかない近代化」――』学習院大学東洋文化研究所『調査研究報告』75、2024年。
