業を煮やす
読み方:ごうをにやす
「業を煮やす」の意味
物事がなかなか思うように進まず、いらだったり腹を立てたりすることです。
単に怒るのではなく、らちが明かない状態が続くことによって生じる苛立ちを表します。
「業を煮やす」の語源・由来
「業(ごう)」はもともと仏教語で、身体・言葉・心によってなされる行為を指す言葉です。
「業を煮やす」では心の働きに関係する意味で用いられています。
「煮やす」には、物を煮え立たせる意味のほか、怒りなどの感情を激しくする意味があります。
「業を煮やす」という表現は、怒りが腹の中で煮えるという発想に基づくものと説明されています。
「業を煮やす」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「〜が業を煮やす」
苛立つ人物や組織などを主語にする形です。「監督が業を煮やす」「担当者が業を煮やした」などと使います。 - 「業を煮やして〜」
苛立った結果として取った行動を後ろに続ける形がよく見られます。「業を煮やして自分で動く」「業を煮やして席を立つ」などと続けます。 - 「業を煮やした〜」
「業を煮やした」を連体修飾語として、苛立っている人物などを説明できます。「業を煮やした上司」「業を煮やした監督」といった形です。
「業を煮やす」の例文
- 何度問い合わせても返事が来ないため、担当者はとうとう業を煮やして先方へ直接出向いた。
- 選手たちの同じミスが続く様子に業を煮やした監督は、練習方法を一から見直すことにした。
- 会議でいつまでも結論が出ない状況に、参加者の一人が業を煮やし、具体案をその場で提示した。
「業を煮やす」の類似表現
痺れを切らす(しびれをきらす)
「痺れを切らす」は、長く待たされたり物事が進まなかったりして、もう我慢できなくなることをいいます。
「業を煮やす」には腹立たしさが含まれますが、「痺れを切らす」は待つことへの焦りやじれったさにも使え、必ずしも強い怒りを伴いません。
堪忍袋の緒が切れる(かんにんぶくろのおがきれる)
「堪忍袋の緒が切れる」は、それまでこらえてきた怒りが限界を超え、もう我慢できなくなる状態を指します。
長く耐えてきた末に怒りが爆発するという意味合いが強く、「業を煮やす」よりも我慢の限界をはっきり示す表現です。
「業を煮やす」の古い用例
『精選版 日本国語大辞典』が初めて世に出た例として挙げる、1747年の咄本『軽口笑布袋』には、「かの男、大きにごうをにやし」という記述があります。
「ごう」を仮名で書いた形ですが、江戸時代中期にはすでに、らちが明かずいらだつ意味で使われていました。
有島武郎の『或る女』(1919年)には「自分の心の矛盾に業を煮やしながら」という記述があります。
ここでは「〜に業を煮やす」という、現代にも見られる言葉のつながり方があります。
「業を煮やす」の間違いやすい使い方・表記
「業」は「ぎょう」ではなく、「ごう」と読みます。
「業(ぎょう)」には仕事や職業などを表す使われ方がありますが、この慣用句の読みは「ごうをにやす」です。
また、「業を煮やす」は単に激怒することではありません。
物事が進まない、相手がはっきりしないなど、思うようにならない状態にいらだつ場面に適した表現です。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「業を煮やす」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「業を煮やす」項。
