開いた口が塞がらない|意味・使い方・例文
読み方: あいたくちがふさがらない
意味: 相手の言動や予想外の出来事にひどくあきれ、ものも言えなくなること。
「開いた口が塞がらない」の意味
相手の言動や出来事があまりにも非常識だったり、予想外の成り行きになったりして、驚きとあきれのあまり言葉が出なくなる様子を表します。
ただ驚いた場面ではなく、「どうしてそんなことをするのか」「あまりにもひどい」と感じるような、否定的な気持ちを伴う場合に使うのが一般的です。
「開いた口が塞がらない」の使い方
「あまりにも身勝手な言い分には、開いた口が塞がらない」のように、あきれた原因や対象を「には」で示す形がよく使われます。
また、「その話を聞いて、開いた口が塞がらなかった」「信じられない光景を前に、開いた口が塞がらない」のように、「聞いて」「見て」「前に」などの言葉と組み合わせることもできます。
現在の気持ちを表すときは「開いた口が塞がらない」、過去の出来事について述べるときは「開いた口が塞がらなかった」と表現します。
「開いた口が塞がらない」の例文
- 自分で約束を忘れたのに、こちらを責めるなんて開いた口が塞がらない。
- 大切な資料を確認もせずに捨てたと聞き、部長は開いた口が塞がらなかった。
- 店員に怒鳴ったうえ、代金まで払わずに帰ろうとする客を見て、周囲の人々は開いた口が塞がらなかった。
「開いた口が塞がらない」の類似表現
あきれ返る(あきれかえる)
「あきれ返る」は、途方もない言動や出来事に出会い、ひどく驚きあきれることを表します。「開いた口が塞がらない」とほぼ同じ場面で使えます。
ただし、「開いた口が塞がらない」には、あまりのことに言葉まで出なくなった様子が具体的に表れています。「彼の無責任さにあきれ返った」と「彼の無責任さには開いた口が塞がらなかった」では、後者のほうが驚きやあきれの大きさを強く感じさせます。
二の句が継げない(にのくがつげない)
「二の句が継げない」は、あきれたり驚いたりして、次に言うべき言葉が出てこないことを表します。
「開いた口が塞がらない」は、相手の非常識な言動や物事のひどさにあきれた場面で多く使われます。一方、「二の句が継げない」は、会話の途中で思いがけない発言を聞き、返す言葉を失った場面にも使えます。
「開いた口が塞がらない」の古い用例と意味の変化
江戸時代の浄瑠璃『仮名手本忠臣蔵』(1748年)には、「明いた口ふさがれもせずうっとりと」という表現があります。高師直が豪華な贈り物の目録に心を奪われ、我を忘れている場面です。
この用例では、現在一般的な「あきれてものも言えない」という意味ではなく、うっとりしてぼう然とする様子を表しています。現代では、この意味で使うことは一般的ではありません。
夢野久作の「キチガイ地獄」では、自分の信じがたい経歴を聞けば「誰でも開いた口が塞がらないでしょう」と語る場面があります。作品の親本『冗談に殺す』は1933年に刊行されており、驚きあきれるという現在に近い意味で使われています。
同じ1933年に発表された木暮理太郎の「初旅の大菩薩連嶺」にも用例があります。行方を心配していた同行者が先に宿へ着いており、反対に自分が迷子だと思われていた意外な成り行きを、「開いた口が塞がらないとはこの事だ」と表現しています。
間違いやすい使い方・表記
現代では、優れた活躍や美しいものに感動したという意味で「開いた口が塞がらない」を使うのは、一般的ではありません。
「見事な演奏に開いた口が塞がらなかった」とすると、演奏のすばらしさよりも、演奏者や演奏内容にあきれたように受け取られる可能性があります。感動や称賛を表す場合は、「息をのむ」「目を見張る」などが適しています。
表記は「開いた口が塞がらない」です。「空いた口が塞がらない」ではありません。
「開いた口が塞がらぬ」という形もあり、「塞がらぬ」は「塞がらない」を文語的に表した言い方です。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「開いた口が塞がらない」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年。
- 夢野久作「キチガイ地獄」『夢野久作全集8』筑摩書房、1992年。
- 木暮理太郎「初旅の大菩薩連嶺」『山の憶い出 下』平凡社、1999年。