虫がいい
読み方:むしがいい
「虫がいい」の意味
自分の都合ばかりを考え、他人の事情や負担を顧みないさまをいいます。
相手の考えや要求が自分本位で都合よすぎることを批判する、否定的な表現です。
「虫がいい」の語源・由来
ここでいう「虫」は昆虫ではありません。
古くは、人の体内にいて意識や感情に影響を与えるものが「虫」と考えられ、そこから心の動きや内面的な思いを「虫」で表す言い方が生まれました。
「虫が好かない」「虫の居所が悪い」などにも同じ「虫」が使われています。
杉本つとむ『語源海』は「虫がいい」を歓楽街から生まれた言葉とし、江戸時代の言葉を集めた『俚言集覧』では、「虫」を俗に「料簡」、すなわちその人なりの考えや思いを指す言葉として説明していることを紹介しています。
江戸時代には「虫がよい・いい」には複数の意味があり、そのうち自分に都合よく考える意味が、現在の慣用句として定着しました。
「虫がいい」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「虫がいい/虫のいい+名詞」
「考え」「話」「要求」などを後ろに置き、その内容が自分本位であることを示します。「虫がいい考え」「虫のいい話」などの形です。 - 「〜とは虫がいい」
相手の希望や行動を先に示し、それを批判する形です。「自分だけ免除してほしいとは虫がいい」「今さら頼るとは虫がいい」などと使います。 - 「虫がよすぎる/虫がいいにも程がある」
身勝手さの程度が甚だしいことを強く非難する言い方です。「そんな要求は虫がよすぎる」「虫がいいにも程がある」などと使います。
「虫がいい」の例文
- 企画の責任は負わず、成果だけ自分のものにしたいというのは、虫がいい考えだ。
- 何年も連絡してこなかった友人が、困ったときだけ助けてほしいと言うのは虫がいい。
- 練習には参加せず試合にだけ出してほしいなんて、虫がいいにも程がある。
「虫がいい」の類似表現
身勝手(みがって)
人の事情を考えず、自分の考えや都合を優先する性質や行動に広く使えます。
「身勝手な人」「身勝手な行動」のように、人そのものを評する場合にも使いやすい言葉です。
図々しい(ずうずうしい)
遠慮や恥じらいがなく、平気で厚かましい振る舞いをする様子を表します。
要求の内容だけでなく、態度や振る舞いそのものについても使えます。
「虫がいい」の古い用例
『精選版 日本国語大辞典』は、1774年の浄瑠璃『前太平記古跡鑑』に「虫のゑい者」という言い回しがあることを挙げています。
この例では「機嫌がよい」「人がよい」という、現在とは異なる意味で使われています。
十返舎一九『東海道中膝栗毛』(1802~1809年)には、四文銭をもらいながらさらに三文の釣りを求めた人物に対し、「こいつむしのいいことをいふ」と評する場面があります。
相手の自分勝手な要求を非難しており、この時期には現在とほぼ同じ言い回しが使われていました。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「虫がいい」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「虫がいい」「虫」項。
- 杉本つとむ『語源海』東京書籍、2005年、591頁「むしがいい」。
