吠え面をかく
読み方:ほえづらをかく
「吠え面をかく」の意味
「吠え面をかく」とは、泣き顔をすることです。
敗北や失敗などで悔しい思いをしている人に対して使われることが多く、相手をあざけったり見下したりする荒い響きがあります。
「吠え面をかく」の語源・由来
「吠え面」は泣き顔のことで、人が泣き顔になる様子を「吠える」と表現した、やや口汚い言い方です。
「かく」は「べそをかく」「恥をかく」などと同じく、好ましくない状態になることを表しています。
「吠え面をかく」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「あとで/今に吠え面をかく」
後になって失敗したり、悔しい思いをしたりすることを予告する形です。「あとで吠え面をかく」「今に吠え面をかく」などと使います。 - 「吠え面をかくな」
相手への警告や脅しとして使われやすい形です。「あとで吠え面をかくな」「負けて吠え面をかくなよ」などと使います。荒い会話では「を」を省いて「吠え面かくな」とすることもあります。 - 「〜に吠え面をかかせる」
~させる形では、相手を負かしたり困らせたりして悔しい思いをさせることを表します。「相手に吠え面をかかせる」「あいつに吠え面をかかせてやる」などの形です。
「吠え面をかく」の例文
- あれだけ相手を見下していたのだから、決勝で逆転されて吠え面をかいても同情はできない。
- 「今のうちに好きなだけ強がっていろ。あとで吠え面をかくなよ」と彼は言い返した。
- 前回の敗戦を忘れていない選手たちは、今度こそ相手に吠え面をかかせてやると闘志を燃やしていた。
「吠え面をかく」の類似表現
べそをかく(べそをかく)
泣きそうな顔になることをいう表現で、子どもについて使われることも多く、「吠え面をかく」ほど相手を侮辱する響きはありません。
実際に泣きそうな表情をしている場合にも自然に使えます。
泣きを見る(なきをみる)
失敗や不利益によって、つらい思いをすることをいいます。
実際に泣き顔になる必要はなく、「予想外の出費で泣きを見る」のように広い場面で使えます。
「吠え面をかく」に比べると、相手をののしる感じは弱い表現です。
「吠え面をかく」の古い用例
「吠え面」という言葉自体は、17世紀初めの『日葡辞書』(1603~1604年)にすでに掲載されています。
1698年頃の浄瑠璃『十二段』にも「ほへづら見たうもない」という記述があり、当時から泣き顔を指す言葉として使われていました。
「吠え面をかく」というまとまりでは、佐藤直方の『学談雑録』(1716年頃)に「類焼に逢たとて、夫がほへづらかくことか」という記述があります。
18世紀初めには、現在につながる「泣き顔をする」という意味で使われていました。
葉山嘉樹『労働者の居ない船』(1926年)には、「いずれストライキだよ。吠え面かくな」とあります。
ここでは、後でひどい目に遭っても泣き言をいうなという、現代にも残る警告・威嚇の形で使われています。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「吠え面をかく」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「吠面」「吠面をかく」項。
- 集英社辞典編集部編『ルーツでなるほど慣用句辞典』集英社、1991年、「吠え面をかく」項。
- 葉山嘉樹『労働者の居ない船』1926年。
