抜き差しならない
読み方:ぬきさしならない
「抜き差しならない」の意味
身動きが取れず、どうにも処置のしようがないことです。
問題が深刻になり、簡単には逃れたり解決したりできない状態をいいます。
「抜き差しならない」の語源・由来
「抜き差し」は、物を抜き出したり差し込んだりすることです。
「抜き差しならない」は、刀を鞘から抜くことも、鞘へ差し戻すこともできないような状態になぞらえた表現とされています。
刀を動かすことのできない状態から、身動きが取れず、どうにもできない事態をいう表現になりました。
「抜き差しならない」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「抜き差しならない状況・事態」
「状況」「事態」などを後ろに続け、そのままでは解決しにくい状態を表します。「抜き差しならない状況」「抜き差しならない事態」などの形です。 - 「抜き差しならない関係・仲」
簡単には縁を切ったり離れたりできないほど深くかかわった間柄に使います。「抜き差しならない関係」「抜き差しならない仲」などといいます。 - 「抜き差しならないところまで〜」
事態がすでに容易には戻れない段階まで進んだことを表す形です。「抜き差しならないところまで来る」「抜き差しならないところまで進む」などと使います。 - 「抜き差しならなくなる」
それまで対処できていた事態が、しだいに動きの取れない状態になる場合に使います。「借金で抜き差しならなくなる」「問題がこじれて抜き差しならなくなる」などの形です。
「抜き差しならない」の例文
- 次々と新しい問題が起こり、計画はとうとう抜き差しならない状況に陥った。
- 二つの会社は長年の取引を通して、簡単には離れられない抜き差しならない関係になっていた。
- 小さな借金だからと放置しているうちに、気づけば抜き差しならないところまで来ていた。
「抜き差しならない」の類似表現
のっぴきならない(のっぴきならない)
意味はかなり近く、多くの場面で言い換えられます。
「のっぴきならない事情」「のっぴきならない状況」のように、避けることも退くこともできない事情や立場について広く使われます。
にっちもさっちもいかない(にっちもさっちもいかない)
物事が行き詰まり、どうにも進められない場合に使います。
「抜き差しならない」より口語的で、仕事や金銭、計画などがうまく回らなくなった場面にもよく使われます。
「抜き差しならない」の古い用例
1706年の雑俳『銭ごま』には、「抜きさしのならぬ」という言い回しが見られます。
「抜き差し」と「ならぬ」の間に「の」を入れた、現在とは少し異なる形です。
1771年の浄瑠璃『妹背山婦女庭訓』では、「抜差しならぬ証拠ありと」と使われています。
「抜差しならぬ」がそのまま「証拠」を修飾しており、現在の「抜き差しならない事情」「抜き差しならない状況」などに近い形です。
「抜き差しならない」の間違いやすい使い方・表記
「抜き差しならぬ」という形も誤りではありません。
「ならぬ」は「ならない」の古典的な表現で、「抜き差しならぬ状況」「抜き差しならぬ関係」のように使われます。
現代の一般的な文章では「抜き差しならない」が使いやすく、「抜き差しならぬ」はやや古風で硬い響きがあります。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「抜き差しならない」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「抜差ならぬ」項。
- 大日本居合道連盟「ことのは探究Ⅰ」。
- 名古屋刀剣博物館「刀剣ことわざ辞典」。
