読み方:いいきになる

「いい気になる」の意味

ほめられたり物事がうまくいったりしたことをきっかけに、得意になってうぬぼれたり、思い上がったりすることを意味します。

相手が遠慮しているのをよいことに、つけあがる場合にも使われます。

多くの場合、その人の態度を好ましくないものとして見る、否定的な言い方です。

「いい気になる」の使い方

次のような型がよく使われます。

  • 「〜て/〜でいい気になる」
    得意になるきっかけや理由を前に置く形です。「ほめられていい気になる」「一度の成功でいい気になる」などと使います。
  • 「いい気になって〜」
    得意になったあとに取る行動を続けます。「いい気になって自慢する」「いい気になってしゃべり続ける」などの形です。
  • 「いい気になるな/ならないで」
    相手の思い上がりをたしなめたり、そうならないよう注意したりするときに使います。「少し勝ったくらいでいい気になるな」「親切にされたからといっていい気にならないで」などと使います。

「いい気になる」の例文

  • 一度の企画が採用されただけでいい気になっていた彼は、先輩から基本を怠るなと注意された。
  • 監督は初戦に勝った選手たちへ、「一試合勝ったくらいでいい気になるな」と釘を刺した。
  • みんなが笑ってくれるので、弟はいい気になって同じ物まねを何度も続けた。

「いい気になる」の類似表現

調子に乗る(ちょうしにのる)

否定的な意味では「いい気になる」と重なる部分が多く、ほめられたり勢いがついたりして得意になり、軽はずみな行動をする場合に使われます。

ただし、「調子に乗る」には「仕事が順調に進む」という意味もあり、この場合は悪い意味を含みません。

天狗になる(てんぐになる)

得意になって自慢したり、自分を高く評価したりする場合に使います。

「いい気になる」よりも、自慢や思い上がりが前面に出ている人に使いやすい表現です。

「いい気になる」に含まれる「いい気」の意味

ここでの「いい気」は、「よい気分」「気持ちがよい」という意味ではありません。

自分の欠点や周囲の事情に気づかず、自分だけで満足して得意になっている状態を指します。

そのため、「いい」という言葉が入っていても、相手をほめる表現にはなりません。

「いい気になる」の古い用例

二葉亭四迷の『浮雲』には、「好気(いいき)になって尚お巫山戯て」とあります。

周囲がその晩だけは大目に見ているため、相手がいい気になって、さらにふざけ続ける場面です。

現在の「いい気になる」に近い使い方で、「いい気」が「好気」と書かれています。

『浮雲』の初出は1887年(明治20)6月刊の『新編浮雲』です。

明治20年には、すでに「いい気になる」という形が使われていたことが分かります。

参考文献・出典

  • 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
  • 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「いい気になる」項。
  • 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年。
  • 二葉亭四迷『浮雲』、青空文庫(底本:新潮文庫『浮雲』、新潮社)。
ABOUT ME
北澤篤史
ことわざ学会理事。ことわざ・慣用句・故事成語・四字熟語・漢字熟語を対象に、語源・由来、古い用例、文献上の変遷を研究している。2025年度ことわざ研究奨励賞受賞。著書に『〈試験に出る〉マンガでわかる すごいことわざ図鑑』『〈試験に出る〉マンガでわかる おもしろい四字熟語図鑑』『マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑』(いずれも講談社)がある。