矢面に立つ
読み方:やおもてにたつ
「矢面に立つ」の意味
質問・非難・攻撃などが集中する立場に身を置くことです。
厳しい追及を正面から受ける人について使われることが多く、責任や負担の大きい立場という含みがあります。
「矢面に立つ」の語源・由来
「矢面」とは、もともと戦いで敵の矢が飛んでくる正面を指す言葉です。
「矢面に立つ」も、初めは敵の矢を正面から受ける位置に立つことを意味しました。
そこから、実際の矢ではなく、質問や非難、攻撃などを正面から受ける立場についても使われるようになりました。
「矢面に立つ」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「〜の矢面に立つ」
「〜」には、非難や批判など、受ける攻撃の内容が入ります。「非難の矢面に立つ」「批判の矢面に立つ」などの形です。 - 「〜が矢面に立つ」
「〜」には、質問や批判を直接受ける人や立場が入ります。「社長が矢面に立つ」「代表者が矢面に立つ」などと使います。 - 「矢面に立って〜」
後ろには、その立場で行う対応や行動が続きます。「矢面に立って説明する」「矢面に立って答弁する」などの形です。 - 「矢面に立たされる」
自分から進んで立つのではなく、事情によって質問や非難を受ける立場に置かれる場合の形です。「担当者が矢面に立たされる」「責任者が矢面に立たされた」などと使います。
「矢面に立つ」の例文
- 不祥事について説明するため、社長自らが記者会見の矢面に立った。
- 部下を守るため、課長は自分が非難の矢面に立つ覚悟を決めていた。
- 方針を決めたのは本部だったが、利用者への説明を任された現場の職員が矢面に立たされた。
「矢面に立つ」の類似表現
槍玉に上げる(やりだまにあげる)
「槍玉に上げる」は、多くの中から特定の人や物事を取り上げ、非難や攻撃の対象にすることです。
「〜を槍玉に上げる」では攻撃する側から述べることができますが、「矢面に立つ」は質問や非難を受ける側の立場を表します。
「担当者を槍玉に上げる」と「担当者が矢面に立つ」では、見る側が異なります。
「矢面に立つ」の古い用例
1309~1310年頃の『延慶本平家』には、「判官矢面に立て」という形が見られます。
ここでは比喩ではなく、敵の矢が飛んでくる正面に立つという、戦いの場での文字どおりの意味です。
田山花袋の『生』(1908年)には、「其矢面に主人と若い嫁とが立たなければならなかった」とあります。
この時期にはすでに、質問や非難などを受ける立場を「矢面」とする、現在につながる比喩的表現が使われています。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「矢面に立つ」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「矢面」「矢面に立つ」項。
