何奴も此奴も
読み方:どいつもこいつも
「何奴も此奴も」の意味
その場にいる人々を一人残らず指す、「誰も彼も」の乱暴な言い方です。複数の人に対して、怒り、あきれ、軽蔑を向けるときに使うことが多いです。
「何奴も此奴もすごい奴ばかりだ」のように、後ろにほめる言葉を続けることもできます。ただし、「何奴も此奴も」自体が乱暴な言い方なので、ほめていても荒っぽい印象になります。
「何奴も此奴も」の使い方
「どいつもこいつも頼りにならない」のように、後ろに全員へ当てはまる評価や行動を続けます。「応募者はどいつもこいつも準備不足だった」のように、先に対象となる集団を示す形も使えます。
相手を低く扱う言葉なので、目上の人に直接向けたり、改まった文章で人物を評したりする場面には適しません。
「何奴も此奴も」の例文
- 店長は、遅刻した従業員たちに「どいつもこいつも、仕事を甘く見るな」と声を荒らげました。
- 彼が問い合わせた業者は、どいつもこいつも返事が遅く、契約先を決められませんでした。
- 監督は接戦を終えた選手たちを見渡し、「どいつもこいつも、よく最後まで粘った」と笑いました。
「何奴も此奴も」の類似表現
誰も彼も(だれもかれも)
指している範囲はほぼ同じですが、「誰も彼も」には相手をののしる語感がありません。「どいつもこいつも言い訳ばかりだ」を「誰も彼も言い訳ばかりだ」に替えると、全員への不満は残るものの、口調は穏やかになります。
猫も杓子も(ねこもしゃくしも)
区別なく多くの人が同じことをする様子に使います。「猫も杓子も資格を取ろうとしている」のように、世間に広がる流行や傾向を述べる場合に適しています。目の前の特定の集団を乱暴に批評する「何奴も此奴も」とは、使える文脈が異なります。
「何奴も此奴も」に含まれる言葉の意味
「何奴」は「誰」「どの者」に当たる不定称の代名詞で、「此奴」は話題になっている人を指す「この者」に当たります。どちらも人を軽んじたり、遠慮なく扱ったりする言葉です。
二つを助詞の「も」で並べることで、特定の一人ではなく、その集団の全員を指します。
「何奴も此奴も」の古い用例
江戸時代の浄瑠璃『平仮名盛衰記』(1739年)には、「どいつもこいつも吼(ほへ)づら」とあります。現在と同じ仮名の語形で、複数の相手をまとめてぞんざいに扱っています。
「何奴も此奴も」の表記
「何奴」は単独では「どいつ」のほか、「なにやつ」「どやつ」とも読まれますが、この連語では「どいつもこいつも」と読みます。読み違いを避けたい文章では、漢字を使わずに書く方がいいでしょう。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「何奴も此奴も」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「何奴も此奴も」「何奴」「此奴」項。
