読み方:さんかんしおん

「三寒四温」の意味

「三寒四温」とは、冬に寒い日が三日ほど続いたあと、暖かい日が四日ほど続くというように、寒暖が周期的に入れ替わることです。

日本では、寒い日と暖かい日を繰り返しながら、しだいに春らしい気候へ移っていく様子についても使われます。

気象庁では、中国北部や朝鮮半島などに顕著な冬の現象として説明しています。

「三寒四温」の語源・由来

「三寒四温」は、特定の中国古典の故事から生まれたことが確認されている四字熟語ではありません。

もともとは朝鮮半島や中国北部・中国東北部で、冬の寒暖の繰り返しを表した土地の言葉、すなわち俚諺として伝えられてきた表現です。

現在の韓国語でも「삼한사온」といい、漢字では「三寒四溫」と表します。

成立地や成立時期を一つに定められる確かな資料は見つかっていません。

20世紀初頭の日本の気象研究では、朝鮮に古くからある俚言とする説明がある一方、中国北部の文人が「五風十雨」のような対句として作ったものではないか、という説も紹介されています。

したがって、古代中国の特定の書物を「三寒四温」の原典とすることはできません。

気象上は、冬のシベリア高気圧の勢力が強くなると寒気が南下し、弱まると比較的暖かな空気に入れ替わるため、数日単位の寒暖変化が生じます。

ただし、必ず三日と四日に分かれるわけではなく、その長さは気圧配置などによって変わります。

日本本土の冬には、この七日前後の周期が朝鮮半島などほど明瞭には現れません。

その一方、日本では冬の終わりから春先に寒暖の変化を感じやすいため、しだいに暖かくなる時期を表す言葉としても使われるようになりました。

「三寒四温」の使い方

次のような形で使われます。

  • 「三寒四温の〜」
    後ろに「気候」「日々」「時期」などを続けます。「三寒四温の気候」「三寒四温の日々」などの形です。
  • 「三寒四温を繰り返す」
    寒い時期と暖かい時期が交互に訪れることを述べるときに使います。
  • 「三寒四温となる」
    天候が寒暖を周期的に繰り返す状態になったことを表します。

「三寒四温」の例文

  • 中国東北部では、冬になると三寒四温の気候が見られることがあります。
  • 二月に入ってから三寒四温を繰り返し、暖かい日には春の訪れを感じるようになりました。
  • 来週もしばらく三寒四温となり、日によって気温が大きく変わりそうです。

「三寒四温」の類似表現

寒の戻り(かんのもどり)

春に向かって暖かくなったあと、一時的に寒さがぶり返すことです。

「三寒四温」が寒い時期と暖かい時期の繰り返しを指すのに対し、「寒の戻り」は一度進んだ暖かさのあとに再び寒くなることを指します。

「三寒四温」の古い用例

1915年(大正4年)、山内安太は『氣象集誌』に「所謂三寒四温」と題する論文を発表しています。

論文冒頭には

「朝鮮には古来より三寒四温なる俚言あり」

とあり、この時点で現在と同じ「三寒四温」という四字の形が、日本語の気象研究で朝鮮の言葉として取り上げられていました。

さらに、第3期国定教科書『尋常小学国語読本』巻十の「京城の友から」では、京城の冬について、寒さと暖かさがほぼ規則的に交替すると説明したうえで、

「こちらでは昔から之を三寒四温といってゐるさうです」

と記されています。

1918年に発行されたこの教科書では、日本本土の春ではなく、京城の冬の気候を表す言葉として児童に紹介されていました。

1931年(昭和6年)には、寺田寅彦が『中央公論』に発表した「時事雑感」で、朝鮮の「三寒四温」を気温や気圧の約七日周期と関連づけて論じています。

この時期にも、朝鮮の冬に結びついた語として理解されていたことが分かります。

「三寒四温」の間違いやすい使い方・表記

「三寒四温」は春の言葉と思われることがありますが、俳句・歳時記では冬の季語です。

一般の文章や天気の話題では春先の寒暖変化についても使われますが、季語としての分類とは区別する必要があります。

また、「三日寒く、必ず次の四日が暖かくなる」という厳密な気象法則ではありません。

「三」と「四」は、この地方に見られる数日単位の寒暖の交替を言い表したものです。

参考文献・出典

  • 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
  • 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「三寒四温」項。
  • 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「三寒四温」項。
  • 山内安太「所謂三寒四温」『氣象集誌. 第1輯』第34巻第6号、1915年、324~334頁。
  • 朴素瑩『近代日本における韓国表象―主に教科書分析を通して―』九州大学博士論文、2015年。
  • 寺田寅彦「時事雑感」『中央公論』1931年1月。
  • 気象庁「気温、湿度」予報用語。
  • 韓国学中央研究院『한국민족문화대백과사전』「삼한사온」項。
ABOUT ME
北澤篤史
四字熟語・漢字熟語・ことわざ・慣用句・故事成語を対象に、語源・由来、古い用例、文献上の変遷を研究している。ことわざ学会理事。2025年度ことわざ研究奨励賞受賞。著書に『〈試験に出る〉マンガでわかる おもしろい四字熟語図鑑』『〈試験に出る〉マンガでわかる すごいことわざ図鑑』『マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑』(いずれも講談社)がある。