小春日和
読み方:こはるびより
「小春日和」の意味
「小春日和」とは、晩秋から初冬にかけての、春を思わせるほど暖かく穏やかな晴天のことです。俳句では冬の季語として扱われます。
「小春日和」の語源・由来
「小春」という呼び名は古く、中国の年中行事を記した6世紀の『荊楚歳時記』に見られます。
十月について
「又天氣和煖似春故曰小春」
とあり、天気が暖かく春に似ているため「小春」と呼ぶことが記されています。
ここにあるのは「小春」であり、現在の「小春日和」という四字の形ではありません。
日本でも「小春」は古くから使われています。
兼好の『徒然草』第155段には、
「十月は小春の天気、草も青くなり、梅もつぼみぬ」
とあります。
当時の陰暦十月は現在のおおよそ11月から12月上旬に当たり、この時期の春を思わせる暖かさを「小春」と呼んでいました。
「日和」は天気や空模様、特に晴れた天気をいう語です。
「小春」と「日和」が結び付いて「小春日和」となりました。
「小春日和」の使い方
次のような形で使われます。
- 「小春日和の〜」
後ろに「一日」「午後」「陽気」などを続けます。「小春日和の一日」のように使います。 - 「小春日和が続く」
暖かく穏やかな晴天が数日続く場合に使います。 - 「小春日和になる/小春日和となる」
その日の天気について述べるときに使います。
「小春日和」の例文
- 11月の連休は小春日和に恵まれ、公園には多くの家族連れが訪れました。
- 冷たい雨が上がった翌日は小春日和となり、庭仕事も気持ちよく進みました。
- 小春日和が数日続いたあと、北風が強まり、一気に冬らしい寒さになりました。
「小春日和」の類似表現
秋日和(あきびより)
秋の空がよく晴れ、穏やかな天気をいいます。
「小春日和」のように春を思わせる暖かさを条件とせず、秋の晴天を広く指せる点が異なります。
冬日和(ふゆびより)
穏やかに晴れた冬の日をいいます。
冬の晴天を広く指す語で、春のような暖かさが感じられる日だけに限りません。
「小春日和」の古い用例
今回確認できた早い用例には、正岡子規の紀行文『高尾紀行』があります。
初出は1892年(明治25年)12月の『日本』で、鳴雪の句として
「目の下の小春日和や八王子」
が収められています。
少なくとも明治25年には、現在と同じ「小春日和」の四字形が日本語の文献に現れていたことが分かります。
正岡子規の『俳諧大要』にも、1895年(明治28年)の初出本文に
「空は小春日和の晴れて」
という用例があります。
ここでは「小春日和」が文章の中に名詞として組み込まれています。
「小春日和」の間違いやすい使い方・表記
「春」という字が含まれていますが、3月や4月など春先の暖かな日には本来使いません。
文化庁が2014年度に行った調査では、「春先の頃の、穏やかで暖かな天気」という意味を選んだ人が41.7%に上り、季節を取り違えやすい語であることが示されています。
また、1月や2月の暖かな日に使う例も見られるようになっていますが、本来の「小春」は陰暦十月を背景とする語であり、真冬の暖かな日まで広く指す表現ではありません。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「小春日和」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「小春日和」「小春」項。
- 宗懍撰、守屋美都雄訳注、布目潮渢・中村裕一補訂『荊楚歳時記』平凡社〈東洋文庫324〉、1978年。
- 兼好法師『徒然草』第155段。
- 正岡子規『高尾紀行』、初出『日本』1892年12月号。
- 正岡子規『俳諧大要』、初出『日本』1895年10月22日~12月31日。
- 文化庁文化部国語課「『小春日和』はいつ頃の天気か。」『文化庁広報誌 ぶんかる』、2018年5月9日。
- 気象庁「予報用語 季節現象」。
