弊衣破帽
読み方:へいいはぼう
「弊衣破帽」の意味
「弊衣破帽」とは、ぼろぼろになった衣服と破れた帽子、また、そのような粗末な身なりをいいます。
とくに、旧制高等学校の学生に見られたバンカラな服装を指す語として使われました。
「弊衣破帽」の語源・由来
この四字の組み合わせには、中国での古い使用例があります。
元末明初の文人・戴良(1317~1383)の「秋思」には、
往事分明似夢中、敝衣破帽立西風。
とあり、「敝衣破帽」という語の並びが見えます。
現在一般的な「弊衣破帽」と第一字の表記は異なりますが、「弊」と「敝」は「破れてぼろぼろになる」という意味で通用します。
したがって、四字の組み合わせ自体を近代日本で新しく作られた語とすることはできません。
ただし、日本語の「弊衣破帽」が戴良の詩を直接の典拠として成立したとする確かな資料は確認できず、特定の故事から生まれた成語とも断定できません。
日本では近代の学生文化と強く結びつき、よれた学生服やぼろぼろの学帽などを身につける旧制高等学校生の装いを指す言葉として定着しました。
旧制高校では、こうした服装が外見の飾りより内面の充実を重んじる気風と結びつけられることもありました。
「弊衣破帽」の使い方
次のような形で使われます。
- 「弊衣破帽の〜」
後ろに「学生」「姿」「いでたち」「風俗」などを続けます。「弊衣破帽の学生」「弊衣破帽のいでたち」などの形です。 - 「弊衣破帽で〜」
後ろに行動を続けます。「弊衣破帽で歩く」「弊衣破帽で街を闊歩する」などと使います。 - 「弊衣破帽ながら〜」
粗末な身なりと、それとは対照的な人物の性質や行動を続ける場合に使えます。
「弊衣破帽」の例文
- 古い写真には、弊衣破帽の学生たちが寮の前に並んでいる。
- 祖父は旧制高校時代、弊衣破帽で街を闊歩したという。
- その青年は弊衣破帽ながら、講義では誰より鋭い質問をしていた。
「弊衣破帽」の類似表現
蓬頭垢面(ほうとうこうめん)
伸び乱れた髪と垢のついた顔をいい、身だしなみを整えていない様子に使います。
「弊衣破帽」が衣服や帽子を中心に表すのに対し、「蓬頭垢面」は頭髪と顔の汚れを具体的に示す表現です。
敝衣蓬髪(へいいほうはつ)
ぼろぼろの衣服と、よもぎのように乱れた髪を表します。
帽子ではなく髪を要素とするため、旧制高校生の服装という歴史的な連想を伴わず、むさくるしい身なりを広く表せます。
「弊衣蓬髪」とも書きます。
「弊衣破帽」の古い用例
徳富蘆花の『思出の記』には、1900~1901年の発表時期にさかのぼる日本語の用例があります。
「弊衣破帽の人達は、一丁も此方から飛むで出て迎へ」
「弊衣破帽の人達」という形になっており、明治期にはすでに、人の身なりを表して後ろの名詞を修飾する使い方が行われていたことが分かります。
「弊衣破帽」の間違いやすい使い方・表記
「弊衣」の「弊」は、「幣」と書かないよう注意が必要です。
「敝衣破帽」は認められている異表記で、「破帽弊衣(はぼうへいい)」と語順を入れ替えた形もあります。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「弊衣破帽」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「弊衣破帽」項。
- 戴良「秋思」、『元詩選』二集巻二十。
- 公益財団法人日本漢字能力検定協会『漢字ペディア』「弊衣破帽」。
- 旧制高等学校記念館「展示ガイド」。
