当意即妙
読み方:とういそくみょう
「当意即妙」の意味
「当意即妙」とは、その場の状況に応じて、すばやく機転を利かせ、気の利いた対応をすることです。
とっさの返答や判断の巧みさを、肯定的に評価するときに多く使われます。
「当意即妙」の語源・由来
「当意即妙」は、仏教語の「当位即妙(とういそくみょう)」から転じたとされています。
「当位即妙」は天台教学に関係する語で、唐代の僧・湛然(711~782)の『法華玄義釈籤』に基づき、「その位のまま妙である」という考えを表します。
日本でも日蓮の遺文に「当位即妙」の形が見られます。
仏教語の「当位即妙」が、現在の「当意即妙」という表記と機転を表す意味へ変化した具体的な時期や過程は、一つに特定できません。
「位」が「意」に変わった経緯についても、確かな文献から細部まで説明することは困難です。
「当意即妙」の使い方
次のような形で使われます。
- 「当意即妙な~」
後ろに「返答」「受け答え」「対応」「切り返し」などを続けます。「当意即妙な返答」「当意即妙な対応」などの形です。 - 「当意即妙に~」
後ろに「答える」「応じる」「切り返す」などの動作を続けます。「当意即妙に答える」などと使います。 - 「当意即妙の~」
「才」「応対」などを続けます。「当意即妙の才」のように、とっさの機転に優れていることを述べる場合にも使えます。
「当意即妙」の例文
- 記者から予想外の質問を受けても、彼女は当意即妙に答え、会見を滞りなく進めました。
- 子どもの鋭い疑問に対する先生の当意即妙な一言に、教室から笑いが起こりました。
- 予定していた進行が崩れた場面で、司会者は当意即妙の才を発揮して別の話題へ切り替えました。
「当意即妙」の類似表現
臨機応変(りんきおうへん)
「臨機応変」は、そのときの状況に合わせて方法や対応を柔軟に変えることを広く表します。
「当意即妙」は、特にその場ですばやく働く機転や、巧みな受け答え・切り返しを評価する場合に適した語です。
「当意即妙」を構成する言葉の意味
「当意」は、その場で即座に考え出したり、その場に合うように工夫したりすることです。
この語自体は室町時代の『文明本節用集』にも見られます。
「即妙」は、後に「当意即妙」の略としても使われるようになった語です。
『慶長見聞集』(1614年)には
「即妙なる返答」
という用例があり、返答の機転を表しています。
「当意即妙」の古い用例
金春禅竹の能楽論書『明宿集』には、1465年頃の用例として
「当意即妙の舞風のみなるべし」
とあります。
『明宿集』は禅竹自筆の伝書で、寛正6年(1465)頃の成立とされています。
ここでは現在と同じ「当意即妙」の四字形が、能の「翁」の舞いを論じる中で使われています。
受け答えだけではなく、舞のあり方を評する語として中世に用いられていたことが分かる例です。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「当意即妙」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「当意即妙」「当位即妙」「当意」「即妙」項。
- 三省堂編修所編『新明解四字熟語辞典』第二版、三省堂、2013年、「当意即妙」項。
- 菅野博史・松森秀幸訳注『現代語訳 法華玄義釈籤(上)』東洋哲学研究所、2020年。
- 野上記念法政大学能楽研究所「金春家文書デジタルアーカイブ」『明宿集』。
