読み方:こうだいむへん

「広大無辺」の意味

「広大無辺」とは、果てがないほど広く大きいこと、またそのさまを意味します。

空間だけでなく、恩・慈悲・智慧など、形のないものの大きさについても使われます。

「広大無辺」の語源・由来

現在と同じ「廣大無邊」の四字の並びは、中国の漢訳仏典にすでに見られます。

東晋の佛馱跋陀羅訳『大方廣佛華嚴經』(六十華厳)巻二十二には、

一切法界 廣大無邊 無有分際

とあります。

ここでは「廣大無邊」が四字続けて用いられています。

唐の実叉難陀が695~699年に訳した『大方廣佛華嚴經』(八十華厳)にも、

得廣大無邊智海藏解脫門

とあります。

したがって、「広大無辺」は古典の故事を日本で後世に四字へ縮めた語ではなく、漢訳仏典の段階で現在と同じ四字形が使われていた表現です。

ただし、この四字形が最初に成立した文献や時期までは特定できません。

「広大無辺」の使い方

次のような形で使われます。

  • 「広大無辺な(の)〜」
    後ろに「宇宙空間」「世界」「恩恵」などの名詞を続けます。「な」と「の」のどちらでつなぐ形もあります。
  • 「広大無辺に〜」
    後ろに「広がる」「続く」などの動きを続けます。
  • 「〜は広大無辺だ」
    主題を先に示し、その大きさや果てのなさを文末で述べます。

「広大無辺」の例文

  • 山頂から見下ろすと、眼下には広大無辺な雲海が朝日に照らされていました。
  • 研究を重ねるほど、彼は宇宙が広大無辺であることを思い知らされました。
  • 乾いた大地は、国境の彼方まで広大無辺に続いていました。

「広大無辺」の類似表現

広大無量(こうだいむりょう)

意味はほぼ同じで、多くの場面で言い換えられます。

「無量」は量り知ることができないことを表しますが、現代の実用上、「広大無辺」との大きな使い分けはありません。

「広大無辺」を構成する言葉の意味

  • 広大(こうだい)
    広くて大きいことです。
  • 無辺(むへん)
    「辺」は端や境を指し、「無辺」は境界や果てがないことをいいます。

「広大無辺」の古い用例

近松門左衛門の浄瑠璃『用明天皇職人鑑』(宝永2年・1705年初演)には、

くはう大むへんの親の恩

という用例があります。

「くはう大むへん」と歴史的仮名遣いを交えた表記で、「の」を介して「親の恩」へ続けています。

「広大無辺」の間違いやすい使い方・表記

異表記として「洪大無辺」「宏大無辺」があります。

一般的な表記は「広大無辺」です。

参考文献・出典

  • 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
  • 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「広大無辺」項。
  • 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「広大無辺」項。
  • 佛馱跋陀羅訳『大方廣佛華嚴經』巻第二十二、『大正新脩大藏經』第9巻、No.278。
  • 實叉難陀訳『大方廣佛華嚴經』巻第四、『大正新脩大藏經』第10巻、No.279。
  • 京都大学貴重資料デジタルアーカイブ「増補用明天皇職人鑑」。
ABOUT ME
北澤篤史
四字熟語・漢字熟語・ことわざ・慣用句・故事成語を対象に、語源・由来、古い用例、文献上の変遷を研究している。ことわざ学会理事。2025年度ことわざ研究奨励賞受賞。著書に『〈試験に出る〉マンガでわかる おもしろい四字熟語図鑑』『〈試験に出る〉マンガでわかる すごいことわざ図鑑』『マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑』(いずれも講談社)がある。