読み方:すいがんもうろう

「酔眼朦朧」の意味

「酔眼朦朧」とは、酒に酔って目つきがとろんとし、周囲の物がはっきり見えないさまです。

目や視界のぼんやりした様子から、酔いがかなり回った状態についても使われます。

「酔眼朦朧」の語源・由来

「酔眼朦朧」は、北宋の詩人・蘇軾の詩「杜介送魚」に、現在の四字熟語に直接つながる形で見られます。

醉眼朦朧覓歸路

「酔ってかすむ目で帰り道を探す」という内容の句です。

「醉眼朦朧」の四字が原文にそのまま続いているため、故事の内容から後世に四字化されたタイプではありません。

日本で一般に用いる「酔眼朦朧」は、原文の「醉」を新字体の「酔」で表した形です。

「酔眼朦朧」の使い方

次のような形で使われます。

  • 「酔眼朦朧として〜」
    後ろに動作や様子を続けます。「酔眼朦朧として辺りを見回す」などの形です。
  • 「酔眼朦朧たる〜」
    後ろに人物や目つきなどを表す名詞を続けます。文章語的な言い方です。
  • 「酔眼朦朧、〜」
    四字熟語の後でいったん区切り、その人物の見え方や動作を続ける書き方もあります。

「酔眼朦朧」の例文

  • 酒宴が終わるころには、彼は酔眼朦朧として店の出口を探していた。
  • 酔眼朦朧たる客が足を止め、駅の案内板をじっと見上げていた。
  • 宴会で飲みすぎた父は酔眼朦朧、迎えに来た家族の顔にもすぐには気づかなかった。

「酔眼朦朧」の類似表現

酔歩蹣跚(すいほまんさん)

「酔歩蹣跚」は、酒に酔って足元が定まらず、ふらふらと歩くさまです。

「酔眼朦朧」が主に目つきや見え方を示すのに対し、「酔歩蹣跚」は歩き方に重点があります。

「酔眼朦朧」の古い用例

日本の文献では、室町時代の五山禅僧・景徐周麟の『翰林葫蘆集』に古い用例があります。

1518年頃の「楓林暮鴉」に

「酔眼朦朧落墨花」

とあり、16世紀初めまでには日本で「酔眼朦朧」という四字の並びが漢詩文に用いられていました。

景徐周麟は1440年生まれ、1518年没の禅僧です。

明治期には、島崎藤村『破戒』(1906年)でも「酔眼朦朧」と区切って後続の文章につなぐ用例があり、近代日本語の文学作品にも受け継がれていることが分かります。

参考文献・出典

  • 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
  • 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「酔眼朦朧」項。
  • 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「酔眼朦朧」項。
  • 蘇軾『蘇軾集』巻十六「杜介送魚」。
  • 景徐周麟『翰林葫蘆集』の書誌情報について、国立国会図書館所蔵資料。
ABOUT ME
北澤篤史
四字熟語・漢字熟語・ことわざ・慣用句・故事成語を対象に、語源・由来、古い用例、文献上の変遷を研究している。ことわざ学会理事。2025年度ことわざ研究奨励賞受賞。著書に『〈試験に出る〉マンガでわかる おもしろい四字熟語図鑑』『〈試験に出る〉マンガでわかる すごいことわざ図鑑』『マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑』(いずれも講談社)がある。