自己満足
読み方:じこまんぞく
「自己満足」の意味
「自己満足」とは、自分自身や自分の行為に、自分で満足することです。
周囲の評価や実際の成果とは別に本人だけが満足しているという、やや批判的な含みで使われることが多いです。
一方、趣味などについて「自分が満足できればよい」という中立的な意味で使う場合もあります。
「自己満足」の語源・由来
「自己満足」は、古代中国の故事から生まれた四字熟語ではなく、近代の翻訳語彙の中で使われるようになった語です。
1881年(明治14年)刊の『哲学字彙』初版では、「自己」と「満足」に当たる項目はそれぞれ載っていますが、国立国語研究所が公開する翻字本文には、四字の「自己満足」そのものは見当たりません。
1912年(明治45年)刊の『英独仏和哲学字彙』では、英語の複合語に対する訳語として「自足」と並んで「自己満足」が掲げられています。
この資料からは、少なくとも明治末には「自己」と「満足」を組み合わせた現在と同じ四字の形が、近代的な翻訳語として用いられていたことが分かります。
「自己満足」の使い方
次のような形で使われます。
- 「自己満足に終わる」
努力や行動が本人の満足だけで終わり、本来の目的や他者への効果につながらなかったときに使います。 - 「自己満足に陥る」
自分の成果に満足し、それ以上の改善や振り返りをしなくなる場面などで使います。 - 「自己満足に過ぎない」
行動や考えについて、本人を満足させる以上の価値や効果はないと批判するときに使います。 - 「自己満足でかまわない」
趣味や個人的な活動など、他人からの評価を目的としない場面で使います。
「自己満足」の例文
- 丁寧に資料を作ったつもりでも、読み手の疑問が解決しなければ自己満足に終わってしまいます。
- 彼は大会で優勝しても自己満足に陥らず、すぐに次の目標へ向けて練習を始めました。
- 趣味で描いている絵なので、誰から評価されなくても自己満足でかまいません。
「自己満足」の類似表現
自画自賛(じがじさん)
「自画自賛」は、自分自身の行為や作品などを自分で褒めることです。
「自己満足」は心の中で満足しているだけでも成立しますが、「自画自賛」は自分を高く評価したり褒めたりする点が中心になります。
独り善がり(ひとりよがり)
「独り善がり」は、他人の意見や事情を考えず、自分だけで正しいと思い込んで行動することを指します。
「自己満足」よりも、周囲を顧みない態度への批判が強い表現です。
「自己満足」の古い用例
小川未明の『正に芸術の試煉期』には、
「自己満足のために」
という形が見られます。
同作を収めた『芸術の暗示と恐怖』は1924年(大正13年)に刊行されており、この時期には「自己満足」が専門的な訳語だけでなく、評論文の中で名詞として使われていたことが分かります。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「自己満足」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「自己満足」項。
- 井上哲次郎・元良勇次郎・中島力造『英独仏和哲学字彙』丸善、1912年。
- 国立国語研究所『日本語史研究用テキストデータ集 哲学字彙』。
- 小川未明『正に芸術の試煉期』、『芸術の暗示と恐怖』春秋社、1924年。
