時代錯誤
読み方:じだいさくご
「時代錯誤」の意味
異なる時代の人物・出来事・制度などを取り違えて考えることです。
そこから、考え方や行動がその時代の傾向に合わず、古くなっていることについても使われます。
「時代錯誤」の語源・由来
「時代錯誤」は中国古典の故事から生まれた語ではなく、「アナクロニズム」の訳語として明治期に用いられるようになった近代の漢語です。
神田乃武らが編纂した『新訳英和辞典』(1902年)では、アナクロニズムに当たる語の訳として「時代錯誤」が掲げられています。
生田長江編『文学新語小辞典』(1913年)にも
「時代錯誤と訳する」
とあり、1918年の『新らしい言葉の字引』にも収録されました。
それ以前に現在の四字形がいつ成立したかは明らかになっていません。
「時代錯誤」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「時代錯誤な〜」
後ろに「考え方」「発想」「制度」などを続けます。「時代錯誤な価値観」「時代錯誤な制度」などの形です。 - 「〜は時代錯誤だ」
考えや行動などについて述べる形です。「その発想は時代錯誤だ」などと使います。 - 「時代錯誤も甚だしい」
時代とのずれが大きいことを強く批判するときに使います。「時代錯誤も甚だしい主張」などと続けることもあります。 - 「時代錯誤に陥る」
歴史上の出来事などを、別の時代の事情と取り違えて考える場合に使います。「歴史解釈で時代錯誤に陥る」などの形です。
「時代錯誤」の例文
- 江戸時代の出来事を後世の制度に当てはめて説明すると、時代錯誤に陥るおそれがあります。
- 紙の書類だけで手続きを受け付ける方針について、利用者から時代錯誤だという批判が出ました。
- 昔の習慣を理由も考えず現代に押しつけるのは、時代錯誤も甚だしいと彼は指摘しました。
「時代錯誤」の類似表現
旧態依然(きゅうたいいぜん)
昔からの状態が改まらず、そのまま残っていることをいいます。
組織や制度などが変化していない様子を述べる場合に向き、異なる時代を取り違えるという意味では使いません。
時代遅れ(じだいおくれ)
流行・技術・考え方などが、その時代より古くなっていることを広く表せます。
「時代錯誤」より日常的で、歴史上の年代や事物を取り違える誤りには通常使いません。
「時代錯誤」の古い用例
夏目漱石の『三四郎』は1908年(明治41年)に新聞連載された作品で、作中に
「時代錯誤(アナクロニズム)だ」
という表記があります。
古い寺のそばに新しい西洋館が建つ光景を広田先生が評する場面で使われています。
明治末には、単なる年代の取り違えだけでなく、新旧のものが時代にそぐわない形で並ぶことを批評する語として用いられていました。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「時代錯誤」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「時代錯誤」項。
- 夏目漱石『三四郎』、1908年。
- 山口輝臣「広田先生の時代錯誤(アナクロニズム)、三四郎の時代錯誤(アナクロニズム)」『Odysseus』第25号、2020年、111~138頁。
