下にも置かない
読み方:したにもおかない
「下にも置かない」の意味
人を非常に丁重に扱い、手厚くもてなすことを意味します。
特に、客や大切な人物に対して、十分な敬意を払って接する様子に使われます。
「下にも置かない」の語源・由来
「下」は、席次の低い場所である「下座(しもざ)」を指します。
大切な客を下座につかせず、上位の席に迎えることから生まれた表現です。
「下へも置かない」という言い方もあり、「下にも置かない」と同じ由来を持ちます。
「下にも置かない」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「下にも置かないもてなし/歓待」
「もてなし」「歓待」などを後ろに置き、手厚く迎える様子を表す形です。「下にも置かないもてなし」「下にも置かない歓待」などと使います。 - 「下にも置かない扱いをする/受ける」
人に対する接し方について述べる形です。もてなす側なら「下にも置かない扱いをする」、もてなされる側なら「下にも置かない扱いを受ける」となります。 - 「下にも置かない応対で〜」
接客や応対の様子を示し、その後に動作を続ける形です。「下にも置かない応対で迎える」「下にも置かない応対で接する」などと使います。
「下にも置かない」の例文
- 久しぶりに恩師の家を訪ねると、下にも置かないもてなしを受け、かえって恐縮してしまった。
- 長年会社に貢献した元社員を、役員たちは下にも置かない扱いで迎えた。
- 海外から来た代表団に対し、主催者は下にも置かない応対をして敬意を示した。
「下にも置かない」の類似表現
至れり尽くせり(いたれりつくせり)
必要なものや配慮がすみずみまで行き届いていることを表します。
人への接し方だけでなく、設備やサービス、準備などにも広く使える点が「下にも置かない」と異なります。
厚遇する(こうぐうする)
人を手厚く待遇することです。
接待やもてなしに限らず、地位や条件などを含む待遇全般について使える、やや改まった表現です。
「下にも置かない」の古い用例
1890年の落語『殿様の廓通ひ』には、「下へも置かず大事に致します」という記述があります。
「下にも」ではなく「下へも」、「置かない」ではなく「置かず」という、あとに言葉をつなげる形になっていますが、すでに丁重に扱う意味で使われています。
明治時代には、現在も使われる「下へも置かない」と似た言い回しが実際の文章に現れていたことが分かります。
「下にも置かない」の間違いやすい使い方・表記
「大切な人を上位に扱う」という意味から「上にも置かない」としてしまうことがありますが、標準的な慣用句は「下にも置かない」です。
「下」が下座を指し、そこに置かないという発想で成り立っています。
「下へも置かない」「下にも置かぬ」は異形として使われ、「下にも置かぬもてなし」のような形は、誤りではありません。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「下にも置かない」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「下にも置かない」項。
