乗りかかった船
読み方:のりかかったふね
「乗りかかった船」の意味
物事を始めたり、あることに関わったりした以上、途中でやめたり身を引いたりするわけにはいかないことのたとえです。
行くところまで続けようという決意を表すほか、「ここまで関わったのだから仕方がない」という気持ちを伴うこともあります。
「乗りかかった船」の語源・由来
船に乗って岸を離れると、次に船を降りられる場所へ着くまで、途中で自由に下船することはできません。
その状況を、すでに始めた物事や関わりを途中でやめられないことにたとえた表現です。
「乗りかけた船」「乗り出した船」「乗りかかった馬」などの異なる形もあります
「乗りかかった船」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「乗りかかった船だ」
すでに関わっていることを理由に、続ける意志や覚悟を示す形です。「もう乗りかかった船だ」「ここまで来たら乗りかかった船だ」などと使います。 - 「乗りかかった船だから〜」
「だから」「なので」などを続け、途中でやめずに行動する理由を述べます。「乗りかかった船だから最後まで手伝う」「乗りかかった船なので付き合う」などの形です。 - 「乗りかかった船と思って〜」
すでに関わった以上は続けようと考えて行動する形です。「乗りかかった船と思って協力する」「乗りかかった船と思って最後までやる」などと使います。
「乗りかかった船」の例文
- 最初は少し助言するだけのつもりだったが、乗りかかった船だ。店が開くまで手伝うことにした。
- 準備中に問題が続いたものの、乗りかかった船だから、文化祭の実行委員を最後まで務めよう。
- 途中から参加した仕事だったが、乗りかかった船と思って、報告書の完成まで付き合った。
「乗りかかった船」の類似表現
騎虎の勢い(きこのいきおい)
虎の背に乗った者が、途中で降りれば危険なため、そのまま進むしかないというたとえです。
「乗りかかった船」が、始めたり関わったりしたことを途中でやめにくい場合に広く使われるのに対し、「騎虎の勢い」は、物事の勢いがついてしまい、今さら中途でやめられない状況を表す硬い表現です。
毒を食らわば皿まで(どくをくらわばさらまで)
悪いことに手を出してしまった以上、徹底してやってしまおうという意味で使われます。
「乗りかかった船」は仕事や人助けなどにも使えますが、「毒を食らわば皿まで」には、すでに好ましくないことをしてしまったのだから最後までやってしまおうという、投げやりで大胆な語感があります。
「乗りかかった船」の古い用例
井原西鶴『好色五人女』には、1686年に「乗かかったる舟なれば」という言い回しが見られます。
実際の船について述べたものではなく、すでに関わったことから途中で引かずに行動を進めるというたとえとして使われています。
現在の「乗りかかった船」とは言い回しが少し異なり、江戸時代には「乗かかったる舟」という形で、すでに比喩的な使われ方がされていました。
山手樹一郎『桃太郎侍』には、1948年の用例として「無理を承知で乗りかかった船なのだ」という表現があります。
この時期には、現在と同じ「乗りかかった船」という形で、途中から引けない状況を表す使い方が見られます。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「乗りかかった船」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「乗掛た船」項。
- 北村孝一編『小学館 ことわざを知る辞典』小学館、2018年、「乗り掛かった船」項。
