無い知恵を絞る
読み方:ないちえをしぼる
「無い知恵を絞る」の意味
良い考えがなかなか浮かばない中で、何とか方策を見つけようと苦心して考えることです。
自分の知恵を「無い」と表現するため、自分自身について使うと、謙遜や自嘲を交えた響きになることがあります。
「無い知恵を絞る」の語源・由来
形の上では、「知恵を絞る」の「知恵」を「無い知恵」とした表現です。
「絞る」は、ここでは普通なら容易に出てこないものを、力を尽くして出そうとする意味で使われています。
「知恵を絞る」は、よい方法や考えを思いつこうとして、一生懸命に考えることをいいます。
この表現は古くから使われており、尾崎紅葉の『多情多恨』(1896年)にも用例があります。
「無い知恵を絞る」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「無い知恵を絞って〜」
後ろに「考える」「案を出す」「工夫する」などを続けます。「無い知恵を絞って方法を考える」「無い知恵を絞って案を出す」などの形です。 - 「〜で無い知恵を絞る」
「一人で」「みんなで」など、考える人や集団を「で」の前に置けます。「一人で無い知恵を絞る」「みんなで無い知恵を絞る」などと使います。 - 「無い知恵を絞った末に〜」
長く考えた結果を後ろに続ける形です。「無い知恵を絞った末に策を決める」「無い知恵を絞った末に助けを求める」などと続けます。
「無い知恵を絞る」の例文
- 限られた予算でイベントを成功させるため、担当者は無い知恵を絞って会場の使い方を工夫した。
- 文化祭にもっと人を呼び込もうと、実行委員全員で無い知恵を絞った。
- 何度考えても決め手がなく、彼は無い知恵を絞った末に、経験者へ相談することにした。
「無い知恵を絞る」の類似表現
知恵を絞る(ちえをしぼる)
意味は大きく重なります。
「知恵を絞る」は相手や集団についても使いやすい中立的な表現です。
「無い知恵を絞る」は「無い」が加わるため、自分について言えば謙遜や自嘲の感じを出せます。
頭を捻る(あたまをひねる)
良い案を出そうとして考えを巡らす意味では近い表現です。
「頭を捻る」には、物事が理解できず疑問に思って考え込む意味もありますが、「無い知恵を絞る」にはその使われ方はありません。
「無い知恵を絞る」の古い用例
太宰治の『新釈諸国噺』は1945年に生活社から刊行されました。
その中の「猿塚」には、「一世一代の無い智慧を絞って懸命に取りなせば」とあります。
現在一般的な「知恵」ではなく「智慧」と表記されていますが、「無い智慧を絞って」という文型と意味は現在の使われ方とほぼ同じです。
「無い知恵を絞る」の間違いやすい表記
「しぼる」は「絞る」と書きます。
「絞る」には、ねじって水分を出す意味のほか、知恵や声などを無理に出す意味があります。
「無い知恵を絞る」という言葉も、「絞る」の正しい使い方の一つです。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「無い知恵を絞る」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年。
- 集英社辞典編集部編『ルーツでなるほど慣用句辞典』集英社、1991年、「知恵を絞る」項。
- 太宰治『新釈諸国噺』生活社、1945年。
- 文化審議会国語分科会『「異字同訓」の漢字の使い分け例(報告)』文化庁、2014年。
